目次
伝統の薬用ハーブの採取と、現代の危機
かつて、文明化の波が押し寄せる前のアフリカでは、伝統的な祈祷師のみが薬草を採取していたため、その均衡は保たれていました。
今でも存在する現代の祈祷師は、伝統の方法で治療のための薬草を保護し、絶滅から守っています。採取する植物にはタブーがあり、その植物が回復し、将来的にも採取に耐えるだけの再生産が行われるよう、採取をコントロールしていました。
現在、乱獲され減少している薬用植物が、過去の状態まで回復するのは困難だといわれています。中には、絶滅の危機に瀕している植物さえ存在します。特に、アフリカの限られた地域にのみ分布する植物は、絶滅寸前だともいわれています。
こうした背景には、アフリカでは野生のハーブのみ、メディカルハーブとしての力があると信じられているため、有用なハーブや植物の栽培が根付かず、野生のハーブが無計画に採集されているという事情があります。これには経済的な事情もあり、栽培にかかる手間が、その販売価格に見合わないということもあり、さらに野生のハーブの採集に拍車をかけています。
こうした野生ハーブの保護のために、それらの種を、栽培によって保護しようという動きも出てきています。
アフリカのメディカル・ハーブ(14選)
アフリカの植物の80%は、薬用植物です。そして現地の人々は現代でも、基本的にその健康管理を植物に頼っています。
そうした薬用植物のうち、主なものを、目的別に14種ご紹介いたします。
鎮痛・抗炎症系のハーブ
アロエ・フェロックス(ケープアロエ)
(英名:Tap aloe / Bitter aloe、学名:Aloe ferox)
アロエは、南アフリカ共和国からアラビア半島に至る広い地域に分布しますが、特にアフリカ大陸南部とマダガスカル島に、集中して分布しています。
アロエは世界中で600種が存在するとされますが、そのうち、アフリカを原産地とするアロエは250種以上、マダガスカル島では約40種と言われます。
アロエは鑑賞用のものもある一方で、その種のほとんどが治療のために利用できると考えられています。薬用として良く知られるアロエには、日本の小さな「キダチアロエ」、南方の大きな「アロエベラ」、南アフリカ・ケープ州の「ケープアロエ」、ソコトラ島の「ソコトラアロエ」などがあります。
アロエ・フェロックスは、ユリ科アロエ属の常緑多年草。南アフリカのケープ州原産で、「ケープ・アロエ」の別名を持ちます。
単独で背丈も高く成長し、その背丈は成長すると3mにも達します。表面に棘(とげ)のある葉は、1m以上になります。冬の終わり~早春には、橙赤色の花を咲かせます。
アフリカでは、ケープ州南部がアロエと関わりが深く、アロエ・フェロックスの産地として有名な歴史があり、西暦161年に初めて、この地からケープアロエが輸出されました。現在でも、ケープ州でアロエ・フェロックスは栽培・加工され、輸出されています。この種は、日本の『日本薬局方』にも記載されており、生薬としても利用されています。
南アフリカの原住民の間では、古くから民間薬として知られ、主に鎮静剤として利用されていました。薬としてのアロエ・フェロックスは、その苦味成分「アロイン」が有効成分となり、健胃作用、整腸作用を持ちます。
また一方、化粧品に使用するための非苦味ゲルも得られます。
ブッコノキ
(英名:buchu / round buchu / true buchu、学名:Agathosma betulina)
ブッコノキは、アガトスマ(Agathosma)属の常緑低木で、別名“ブチュ、ブークー、ブック”などとも呼ばれる芳香性のあるアガトスマ属の植物のうちのひとつです。以前は、ブッコノキの学名は“Barosma betulina”とされていました。
原産地は南アフリカの西部の高度の低い山地とされ、アフリカ全土にも自生しています。
野生のブッコノキはまだ十分に存在しているものの、再生するよりも早いスピードで採取されているのが現状です。
通常使用されるのは、精油や葉のチンキとして、お茶やキャンディー、お酒のフレイバー(香り付け)に利用されます。特に南アフリカでは、ブッコノキの香りをつけたお酒は、“ブッチュ・ブランデー”として知られます。
アフリカでの民間薬として、ブッコノキは、南アフリカの原住民たちにとって、様々な疾病に対して利用されるものでした。
ブッコノキの主な成分は、イソメントン(isomenthone)とディオスフェノール(diosphenol)です。
ブッコノキの薬効としては、精油に抗菌作用、利尿作用があり、膀胱炎や尿路感染症(尿道炎)、痛風などの治療に使われます。その他、リウマチや浮腫、筋肉痛や糖尿病などの疾病にも効果を持つことが知られています。
精油は、柑橘系のすっきりとした爽やかな香りです。
精油以外にもブッコノキは薬草として利用され、その効果として、
- 防腐、消毒:芳香成分ディオスフェノールによる
- 利尿:むくみ解消の目的にも。
などが挙げられます。
特に、むくみの改善や、腎臓の機能補助として、ブッコノキはサプリメントとして商品化もされています。
また、ブッコノキの葉は、乾燥後に輸出され、主にイギリスやアメリカで医薬品として使用されています。
他のアフリカのハーブと同様、ブッコノキもまた、薬草であると同時に、有毒性もあります。
ブッコノキには禁忌事項があり、その芳香成分が中毒性を持つため、妊産婦や授乳中の女性は、使用を避ける必要があります。
ブッコノキ以外にも、アガトスマ属の植物には、芳香性を持ち古くから薬草として利用され、同じように“ブチュー”と呼ばれて来た植物が複数あります。
■アガトスマ属
(英名:buchu、学名:Agathosma)
アガトスマ属は、ミカン科に属する植物で、約140の種を含む開花植物の総称です。一般的な名称として、“ブチューBuchu”、“ボエゴー(Boegoe)”、“ブッコ(Bucco)”、“ブークー(Bookoo)”、“ディオスマ(Diosma)”などと呼ばれます。
薬草として利用される“ブッコノキ”は、ミカン科アガトスマ属の“Agathosma betulina”ですが、その香りがとても似ているため、ミカン科アクマデニア(Acmadenia)属のアクマデニア・ヘテロフィラ(Acmadenia heterophylla)もまた、“ブチュー(Buchu)”と呼ばれ親しまれています。
アクマデニア・ヘテロフィラは、背丈40cmほどに成長し、白または淡いピンクの5枚の花弁を持つ花を咲かせます。年間を通して花を咲かせ、アルカリ性の土壌を好みます。
また、“ボエゴー(Boegoe)”は、もともと、コイコイ族起源の言葉での呼称ですが、南アフリカの多くの植物や菌類、また鉱物を指しています。ボエゴーの植物は、葉の腺から出る揮発性の油から、とても強い香りが放出されますが、このように茎や粉末の葉、また揮発性の油が生薬として用いられる植物の種が、ボエゴーと呼ばれます。これらは、南アフリカで伝統的な調剤として使用されていました。
これらの属の低木は、南アフリカ原産で、南アフリカの標高の低い山地・ケープ州の灌木地帯に分布しています。“Buchu”の一種。
アガトスマ属の植物は、小さな潅木か亜潅木で、その茎は30~100cmの高さまで成長します。一部の種は、より低い背丈のものや、匍匐(ほふく)性の種も存在します。
花は白、ピンク、赤、紫などの色で、5本の花弁を持ちます。
“アガトスマ(Agathosma)”という属名は、「良好な香り」を意味しますが、実際に、アガストマ属の植物の多くは、とても高度な芳香性を持ちます。さらに、アガトスマ属のいくつかの種は、薬草として治療に利用されます。
その葉から採れる濃い色の油は、古くから泌尿器の消毒や利尿のための薬として利用されてきました。
また、抗炎症、抗感染、抗真菌などの作用を持ち、副作用のない「自然の抗生物質」として「奇跡のハーブ」とも言われています。さらに、自然の抗酸化物質(ビタミンA、ビタミンB、ビタミンE、ケルセチン、ルチン、ヘスペリジン、ジオスミンなど)と、バイオフラボノイドも含んでいます。
アガトスマ属の植物は、以下のような症状を緩和する薬として利用されます。
- 尿路感染症:穏やかな利尿作用により。
- 腎臓の感染症
- 関節炎
- PMS
- 性感染症
さらに、高血圧や先天性心不全に対しての利用も、研究が進んでいます。
アガトスマ属の植物については、主に以下の状態の場合、使用を控える必要があります。
- 妊娠中・授乳中の女性
- 尿路感染症で、痛みや腫れがある場合
- 手術を控えている場合、手術の2週間前を越えた時期(血液凝固のプロセスを遅くさせる働きがあるため)
また、通常の健康状態であっても、大量に摂取すると下痢につながる場合もあるため、容量を守る必要があります。
抗菌・抗ウイルス系のハーブ(自然の抗生物質として)
アフリカンチェリー
(英名:african cherry、和名:アフリカサクラソウ、学名:Prunus africana)
アフリカンチェリーは、バラ科プルヌス属の、セラサス(Cerasus)亜属に属する潅木です。学名に“アフリカーナ(africana)”とつくことからもうかがえるように、アフリカンチェリーはプルヌス属のうちアフリカ原産の種です。
アフリカンチェリーの生息地は、アフリカの中部と南部のモンタン(montane)地帯、また、ビオコ(Bioko)島(ギニア湾にある島で、赤道ギニアの一部)、サントメ(Sao-Tome)島、グランドコモル(Grande Comore)島などで、アフリカの広い地域に分布しています。
高さ30~40mにまで成長し、熱帯雨林の「林冠」(りんかん:「森林の最上部で、樹冠が連続して見えるところ」の意)となる樹木です。
湿潤な気候を好み、年間雨量900~3,300mm(=35~130インチ)の地域で、また海抜900~3,000m(=3,000~10,000フィート)地域で目にします。
その幹はたいへんに大きく、また、樹冠(じゅかん:「樹木の上部で枝や葉が茂っている部分」の意)が大きく広がっていくのが印象的な形態となっています。
また、アフリカンチェリーの薬効のため、その樹皮が大量に採取され、国際的に利用されています。こうした大量採取は、将来、再生し、長期的に種が生存することに対し、暗い見通しであると示唆されています。
■伝統的な薬として
アフリカンチェリーの樹皮は、アフリカで伝統的な治療薬として利用されてきました。発熱、マラリア、創傷を覆うもの(包帯など)として、胃痛、腎臓病、淋病(りんびょう)、および精神病に対して使用されてきました。また、下剤、食欲促進剤としての利用や、矢に塗る毒としても利用されました。
近年では1960年代に、アフリカンチェリーの樹皮抽出物が良性前立腺肥大の治療に有効であることが判明し、樹皮から調製される生薬“ピジウム(Pygeum)”が良性前立腺肥大症 (BPH)の代替薬としても使用されるようになりました。
現在では、この抽出薬は、国際的に取引されています。
消化器を整えるハーブ(虫下しハーブ)
アフリカホウセンカ
(学名:Impatiens walleriana
アフリカホウセンカは、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の多年草。
原産地は熱帯アフリカです。
栽培種としては、よく知られるホウセンカ(学名:Impatiens balsamina L.)やニューギニアインパチェンス(学名:Impatiens hawkeri W.Bull などの血を引く園芸品種群)と同じツリフネソウ属(学名:Impatiens)になります。
別名「インパチェンス」で知られることが多く、夏の花として栽培されたものが馴染み深いでしょう。花を楽しむ栽培種は背が低いのですが、野生種は高さ30~50cmまで成長します。
属名の“インパチェンス(Impatiens)”は「耐えられない」という意味ですが、その果実に触れるとパチンとはじける様子が表現されています。
近年、ヨーロッパから起こってきた代替療法のひとつ“フラワーエッセンス”を生み出したバッチ博士が、自ら発見したフラワーエッセンスの最初の花もインパチェンスで、このはじける様子が印象的な花の性質として取り入れられています。
バッチ博士が利用したのは、アフリカホウセンカではなく、同じツリフネソウ属の“オニツリフネソウ(和名:鬼釣舟草、学名:Impatiens glandulifera)”でした。
ヨーロッパなどでは、インパチェンスといえば観賞用の植物ですが、原産地のアフリカでは、薬草として利用されていました。
例えば、ビクトリア湖南西部のスクマ族は、アフリカホウセンカの根を堕胎に用いる一方で、キリマンジャロ山麓のチャガ族は、その茎を腹部や肝臓の痛みの治療薬として利用します。
循環器系を整えるハーブ(排泄・利尿効果)
ボトルジンユ
(英名:Dog’s bane、学名:Plectranthus ornatus)
ボトルジンユは、高さ30cm程に成長する多年草です。
原産地は、アフリカ東部のエチオピアからタンザニアです。
枝は茎の基部からよく分枝し、縁に円鋸歯のある伏毛に被われた葉が広がり、不快な臭いがあります。
花は一年中咲き、青味がかったふじ色で、穂状に咲きます。
ボトルジンユには、以下のような薬効が確認されています。
体内からの余分な塩分の排泄、血圧降下作用、血液浄化作用(血をサラサラにする)、高血圧予防など。
こうしたことから、ボトルジンユは、高血圧、高血糖、高脂血症、また冷え性や花粉症などの症状に効果のあるメディカルハーブとして、伝統的に使われてきました。
また、カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれており、栄養の補給にも役立ちます。
ボトルジンユの葉は、ハーブティとしても利用されます。
数枚の葉を水に入れ沸騰させ10~20分程度煮出すか、または、乾燥させた葉にお湯を注いで、ハーブティーとして飲用できます。
呼吸器系を整えるハーブ
アフリカワームウッド
(英名:Wild wormwood または African wormwood、学名:Artemisia afra)
アフリカワームウッドは、その属するアルテミシア属のうちで、唯一の固有種* 1)です。
注 *1) 固有種:その国や地域にしか生息・生育・繁殖しない種。
南アフリカからエチオピア北部まで、アフリカ北部と東部までの広い地域に分布しており、ケニア、タンザニア、ウガンダ、エチオピア、ジンバブエ、ナミビアなどで、アフリカワームウッドが見られます。
生育する土地は主に小川のそばなどの湿地で、群生して成長します。木質の茎は長く伸び、0.5~2メートルの高さに成長します。
また、アフリカワームウッドは、アフリカではポピュラーな薬用植物です。
咳、発熱、風邪、寒気などの風邪の症状や、百日咳、喘息などの呼吸器の問題、消化不良、食欲不振、胃の萎縮などの消化器の不調、さらに疝痛や痛風、マラリア、糖尿病、膀胱の問題、インフルエンザや痙攣などに関して、主に栄養面からの治療に利用されています。
薬として利用されるのは、根、茎、葉で、それらは、湿布剤、注入剤、ローション剤、吸入用や浣腸剤など、そして精油として利用されます。
人体への薬以外には、蛾避けや殺虫用としても、スプレーなどでよく使われるものです。
ペラルゴニウム属
(和名:テンジクアオイ属、学名:Pelargonium)
ペラルゴニウム属は、約200種の多年草、多肉植物、および低木を含む常緑の開花多年草です。
ペラルゴニウムの多くの種は南アフリカに生息し、また、世界中の温帯・熱帯地域にも生息しています。
ペラルゴニウムという名称は、ギリシア語でコウノトリを意味する語“ペラルゴス”に由来しますが、それは、この植物の種子の頭部が、コウノトリの形に似ているためだといわれます。
ペラルゴニウムは、背丈50cm程度(最大80cm)に成長します。
その茎は分枝して茂り、葉は鮮やかな緑色の表面に深い切れ込みが入っており、小さな毛が生えています。花は大きく、赤、紫、サーモンピンク、白など、様々な美しい色をしています。
原産地は、ナミビアを含む南アフリカ(ケープ地方)で、またオーストラリアも原産地に含む説もあります。
ペラゴニウム属は、その属するフウロソウ(Geraniaceae)科の中で大きな属で、約800の種が存在します。それらは主に、世界中の温帯~亜熱帯帯に分布しています。
南部アフリカにはペラゴニウム属の90%が分布しており、他の地域にはこの属のうち約30種のみが分布していますが、30種のうちの約20種は東アフリカのリフト谷に存在し、残りがオーストラリア南部やタスマニアに生育しています。
また、この属に属する植物のうち、いくつかの種は、アフリカ大陸以外でも発見されています。それらの地域は、マダガスカル南部、イエメン、イラク、小アジア、ニュージーランド北部、南大西洋の孤島(セント・ヘレナとトリスタン・ダ・クンハ)、インド洋のソコトラ島などです。
■薬草としての利用
薬草としては、アフリカでは古くから、伝統的な祈祷師が呼吸器系の疾患に対する薬として利用してきました。また、下痢、腸や肝臓の問題など消化器系のトラブル、切り傷や発熱、腎臓の疾病などの薬として、また疲労回復のためにも、ペラゴルニウムの根が利用されました。
ペラルゴニウム属のゼラニウムのオイルは、アロマテラピーではリラックス効果が知られており、近年では、呼吸器や風邪の際の薬として、ペラルゴニウム・シオイデス(Pelargonium sidoides)やペラルゴニウム・レニフォーム(Pelargonium reniforme)が、ヨーロッパやアメリカで販売されています。
また、ペラルゴニウム・シオイデスは、エキナセアと共に、気管支炎の薬として利用されています。
1800年代には、イギリス人のチャールズ・スティーブンスが、アフリカ滞在中に結核の治療として、祈祷師からペラルゴニウムの根を処方されたことから、ペラルゴニウムから作った特許薬をヨーロッパで販売する経緯となります。
その後、1980年代には、風邪や呼吸器感染症に対する自然薬として、ペラルゴニウムの抽出エキスが販売され、ペラルゴニウムの商品化ヨーロッパやアメリカでは、今でも継続されています。
現代では、ペラルゴニウムの作用・効果として、抗菌・抗炎症作用、美肌効果なども知られています。ペラルゴニウムに含まれるポリフェノール“マリン”の、抗菌・抗ウイルス・抗酸化作用によって、慢性気管支炎などの二次感染を防ぐための天然の抗生物質としても、ペラルゴニウムは利用されています。
現在、アメリカや日本などでも、ペラルゴニウムはいくつかの種が交雑され、さまざまな種が栽培用として作り出されています。その交配の主な親となるのは、南アフリカ・ケープ地方原産のペラルゴニウム・ククラツム(Pelargonium cucullatum)とペラルゴニウム・グランディフロルム(Pelargonium grandiflorum)です。
心臓に作用するハーブ
キンリュウカ属
(和名:金竜花、学名:Strophanthus Species)
キンリュウカ属は、キョウチクトウ科の開花植物で、常緑、又は落葉性の常緑蔓性低木~つる性の植物です。
キンリュウカ属の花の姿は独特で、5枚の花弁の先が細く長い紐状になり、先のほうで紐状のものが絡み合っています
属名の“Strophantus”は、ギリシャ語の“strophos”(「ねじれたひも」の意)と “anthos”(「花」の意)に由来していて、この花の特徴をよく表しています。
もともと、熱帯アフリカが原産だったものが南アフリカへ伝わり、またいくつかの種は、南インドからニューギニア、中国南部へも伝わっていきました。
熱帯アジアやアフリカに、約60種が分布していますが、そのうち半数以上の種はアフリカに分布しています。
キンリュウカ属は、高さ2~6メートルまで成長し、長楕円形から楕円形の葉が対になっています。花は黄色で、萼片(がくへん)が長く伸びて下垂します。この花冠の形が独特なため、観賞用としてもよく栽培されています。
枝や種子に毒(ステロイドのストロファンチン)が含まれます。アフリカでは、ソマリ族が狩猟の際に矢に塗る毒として用いて、獲物である動物を気絶させて狩猟しています。
■特効薬にもなる矢毒の成分
狩猟生活を行うアフリカの民族にとって、獲物を獲るための毒矢は、生活に根ざした武器でした。アフリカ以外でも、世界中の狩猟民族にとっては、毒矢の文化が歴史に見られますが、世界の地域によって、使われた毒が異なります。主な毒の違いにより、世界中の毒矢文化は、4つほどに分類されますが、その中でアフリカ大陸は、”ストロファンツス毒矢文化圏”と呼ばれ、ストロファンチンが毒として使われました。
このストロファンタス(キンリュウカ)属の中でも、「コンビ」と呼ばれる種子から、アフリカの毒矢の毒は調整されました。
また、東アフリカのソマリア地方で矢毒に使われていたのは、「ウアバイの木」の樹皮や根から単離された活性物質”ウアバイン(Ouabain)“です。ウアバインは、日本薬局方には”ストロファンチン”の名で収録されているのですが、ステロイド強心配糖体を含み、強心作用があります。
ウアバインの効果により、排泄や利尿効果を促進し腎機能を高め、また、浮腫の治療にも使われます。
その他にも、毒性のある物質として、毒性のアルカロイド、強心配糖体 g- ストロファンチン(cardiac glycosides g-strophanthin (syn. ouabain))(syn.ouabain)、k- ストロファンチン(k-strophanthin)、e- ストロファンチン(e-strophanthin)などを含んでいます。
これらは主に心臓に作用します。
一方で、キンリュウカ属の植物が含む物質の中には、心臓の収縮を増強して心臓を刺激する効果があります。これらは、心不全の治療薬ウアバインの原料になります。これらは、ドイツとフランスでは、強心剤として用いられています。
現代では、心臓の治療用には、gストロファンチン(g-strophanthin)の有効性が指摘されています。
例えば、同じように心臓病の薬の成分として有名なジギタリス(Digitalis purpurea)から製造されたジゴキシン(Digoxin)の効果に似たものであるといわれ、現在では、強心剤の原料として利用されています。
また生活の中では、インド東部で、女性たちの髪飾りに使われてきたといいます。
皮膚疾患に利用されるハーブ
ミルクブッシュ
(英名:Milk bush または Pencil tree、和名:ミドリサンゴ(緑珊瑚)または アオサンゴ(青珊瑚)、学名:Euphorbia tirucalli)
ミルクブッシュは、はトウダイグサ科の常緑低木です。
原産地は、アフリカ東部周辺の乾燥地、またマダガスカルとされていますが、世界中の熱帯に広く帰化しています。
背丈は、高さ5~8メートルまで成長し、花は枝の先に杯状に数個つけます。
茎は濃緑色や品種によっては赤色で、よく分枝しますが、若枝の小さな葉は生長過程で脱落するため、茎だけが目立っています。
また、茎を切ると白い乳液が出ることから、“ミルクブッシュ”の名で呼ばれています。この乳液には、アルカロイドが多く含まれています。また、テルペノイドも含まれています。
観賞用に栽培されることで知られていますが、アフリカやインドでは、古くから民間薬としても用いられてきました。
例えば、ブラジル、インド、インドネシア、マレーシアなどでは、がん、出血、腫瘍、イボの治療に使用されています。さらに、インドおよびマレーシアでは、喘息、咳、神経痛、リウマチ、歯痛などにも使用されています。
また中国では、乾燥したミルクブッシュを、疥癬(かいせん)などに対する外用薬として用いることもあるようです。
また、呪術的な意味での利用として、ケニアではミルクブッシュの有毒性にちなみ、魔除けとして門前に植えられることも多くあります。
一方で、毒性も強く、民間薬としての利用が、アフリカで集中的に発生するリンパ腫である「バーキットリンパ腫」*2)の誘発因子ではないかとも考えられています。
注 *2)バーキットリンパ腫:直接の原因はEBウイルスとされます。
さらに、その毒性としては、茎から出る乳液に含まれるホルボールエステル等があります。この毒性は強く、皮膚につくとかぶれを起こしたり、また特に目に入ると危険で、注意が必要です。
アフリカの原住民たちは、この乳液を、魚を捕獲するときの毒としても使用するといわれます。
筋肉・関節などへ作用するハーブ
グロリオサ・スペルバ
(英名:flame lily など、学名:Gloriosa superba)
グロリオサ・スペルバは、イヌサフラン(Colchicaceae)科の多年草です。
英語では様々な意味で表現され、「炎のユリ(flame lily)、つるの伸びるユリ(climbing lily)、地を這うユリ(creeping lily)、栄光のユリ(glory lily)、キツネユリ(gloriosa lily)、 虎の爪(tiger claw)、火のユリ(fire lily)」など、多くの別名を持ちます。
グロリオサ・スペルバの茎は攀縁性(はんえんせい:「絡みついたり巻きついたりしてよじ登る茎の性質」の意)で、巻きひげを使って4メートルほど長く伸びます。
花は、赤から、成熟するとオレンジ色まで変化しますが、黄色い花となることもあります。
グロリオサ・スペルバの原産地は、アフリカ南部や熱帯アフリカです。また、アフリカやアジアの多くの国に生息しており、インドでは、タミル・ナードゥ州の州花にもなっています。
生息できる土地も多岐に渡り、熱帯ジャングル、森林、やぶ、森林、草原、 砂丘などの土地に、分布しています。また、痩せた栄養価の低い土壌や、標高2500メートルの土地でも生育できることが特徴です。

グロリオサ・スペルザの分布図:緑色=自然の分布(Kew’s World Checklist of Selected Plant Families (2011)による )、水色=持ち込まれた地域(Pacific Island Ecosystems at Risk (PIER)による)
グロリオサ・スペルバは、一般的に観葉植物として知られる一方、アフリカでは、薬効を持つ薬として、また有毒植物としても、よく知られています。
グロリオサ・スペルバに含まれる“コルヒチン”や“グロリオシン”などのアルカロイドの毒は大変強力で、動物や人間が摂取すると、死に至ることさえあります。そのため、人を殺すためや、自殺のため、また動物を殺すためにも使用されてきました。グリリオサ・スペルバのすべての部分に、この毒性がありますが、特に塊茎(かいけい)*3)のある根茎(こんけい)*4)の毒性が強くなっています。
注
*3)塊茎(かいけい):地下茎の一部が澱粉(でんぷん)などを貯蔵して、かたまりのようになったもの。
*4)根茎(こんけい):地下茎の一種で、地中または地表をはい、根のように見える茎。
グリリオサ・スペルバの毒性による症状として、経口摂取して数時間以内には、吐き気、嘔吐、しびれ、喉の痛み、腹痛、血を含む下痢と脱水症状などが起きます。さらにその後、横紋筋融解、腸閉塞、呼吸抑制、低血圧、凝固障害、血尿、精神状態の変化、発作、昏睡、および上昇する多発性神経障害にまで至ることがあるため、大変注意が必要です。
また、グリリオサ・スペルバが含むアルカロイドのうちのひとつコルヒチンは、脱毛症を引き起こすことも知られています。
こうした毒性にも関わらず、伝統的な社会では、グリリオサ・スペルバは薬として長く利用されてきました。
例えば、痛風、不妊症、皮膚の傷、ヘビにかまれた傷、潰瘍、関節炎、疝痛、腎臓の問題、チフス、痒み、ハンセン病、打撲、捻挫(ねんざ)、痔、癌、 インポテンス、天然痘、性感染症、さらに、および多くの種類の内部寄生虫など、多岐にわたる症状と疾病の治療に使われます。
また、駆虫薬(お腹の虫下し)や、下剤、解毒剤などとしても使用されています。
ただし、妊婦に使用した場合、中絶を引き起こす可能性があります。
他には、ナイジェリアでは、毒矢に塗る毒としても利用されます。こうした文化では、グリリオサ・スペルバは魔術的にも利用されます。さらに、グリリオサ・スペルバの花は、宗教的儀式でも利用されます。
また、グリリオサ・スペルバはジンバブエの国花でもあり、アフリカの文化に非常に深く根付いていることがうかがえます。
化粧品として利用されるハーブ
シアバターノキ(シアの木)
(学名:Vitellaria paradoxa)=シア(別名:カリテ、英名:shea、学名:Butyrospermum parkii)
シアバターノキは、アカテツ(Sapotaceae)科シアーバターノキ(Vitellaria)属の種で、1属1種*5)の双子葉植物・常緑の小高木です。
英名では、「shea tree, shi tree, vitellaria」などと呼ばれます。
シアバターはシアーバターノキの種子の胚から得られる植物性脂肪です。
注 *5) 1属1種:ひとつの属にひとつの種だけが存在するもの。
シアバターの主成分はステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸で、トコフェロールなどのビタミンも含んでいます。これらはヒトの皮脂とよく似た性質があるため、化粧品などとして肌に塗布すると良く肌になじみ、皮膚に溶け込むように浸透します。こうした“うるおい効果”は、同時にシアバターの蒸発しにくい性質(=不乾性油)とも相まって、肌や髪の表面を油膜で覆う効果となり、乾燥から守ってくれます。
シアの木の原産地は、西アフリカ(ガーナ、ナイジェリアなど)から中央アフリカにかけての地域で、現在でもこの地域に原生しています。
詳細には、アフリカのヴェルデ岬からチャドにかけて広がるサヘル*6)帯が、自生のシアバターノキの分布する地帯です。特にシアバターノキが群生しているのは、ギニアからマリ、またブルキナファソ、ニジェール、ガーナの北部です。
注 *6)サヘル(Sahel):サハラ砂漠南縁部に広がる半乾燥地域。主に西アフリカの地域を指しますが、スーダンや“アフリカの角”の諸地域を含める場合もある。
また、製品化されるシアバターは、ナイジェリア、マリ、ブルキナファソ、ガーナなどで生産されています。
シアバターノキはたいへんに長い期間生き、樹齢200~300年になるものもあります。熟成して実をつけるまでに20~50年かかるため、プランテーションや栽培は難しく、野生のシアバターノキが利用されています。こうしたことから、シアバターノキはとても貴重な樹木なのです。
自生するシアバターノキは、背丈は7~25m程度まで成長します。また、常緑樹ですが、花が咲く前に一度、葉を落とすことが特徴です。
アフリカの草原地帯ではよく見られる樹木で、バオバブとともにサバンナのシンボルのような樹木です。
■シアバターノキの生息域の特徴
シアバターノキが自生する地域は、年間降水量が1,000mm以下で、油脂源となるアブラヤシの栽培が不可能なため、その代替としてシアバターノキが貴重な油脂源となっています。
シアバターノキは、年間降水量が300mm~1800mmの地域でも、生息している地域があります。また、平均気温が24~32℃で生息しやすく、気温の最低21℃、最高36℃程度まで、生息可能です。標高500~1,500メートルのサバンナ地域の乾いた粘土や砂、砂質粘土などが、シアバターノキがよく育つ土壌です。サバンナの強い乾燥に適応した大きな根が、シアバターノキの特徴です。
■シアバターノキの薬効と利用
シアバターノキは、アフリカの生息地付近では、食料として、また民間療法の薬として利用されてきました。例えば、火傷や筋肉痛の際に、また生後間もない赤ちゃんの肌に紫外線や乾燥の対策、皮膚に塗られてきました。
シアバターノキは、成分として、ステアリン酸、オレイン酸を多く含み、酸化しにくい特性を持ちます。特にステアリン酸は人の皮脂にも含まれる成分のため、皮膚に塗布するとよくなじみ、高い保湿性を得られます。
こうしたことから、(例えばガーナでは)シアバターノキは食用、薬用、化粧用と様々な方法で伝統的に利用されてきました。
樹皮は硬く亀裂が入っており、その表面を傷つけると中から白いラテックスが出てきます。
また、果肉の中の種子“シアナッツ”は、固く、鶏の卵ほどの大きさです。
シアバターノキはシアバターとして有名ですが、シアバターは、種子の中の胚“シアカーネル”を加工して作られます。種子は、果実1kgから150~300粒ほど採れますが、果実の重量の約31%にもなります。
近年では、シアバターは西アフリカ諸国の重要な輸出品となっており、食用や薬としてのほか、その保湿性から、石鹸やクリームなどの製品の材料として利用されています。
■シアバターノキの伝説
シアバターノキには「不運を追い払う不思議な力がある」という伝説があり、そのため原産地では「神聖な木」と呼ばれています。
そして、この神聖な木を触れるのは、女性達だけだといわれます。古くから、そして現在でも、原生するシアバターノキから、その実を拾い集めるのは、アフリカの女性たちの重要な仕事とされています。
強壮作用のあるハーブ(精力剤・催淫剤として)
ヨヒンベ
(学名:Pausinystalia johimbe、または誤って Pausinystalia yohimbe とも記載される)
ヨヒンベは、アカネ(Rubiaceae)科パウシニスタリア(Pausinystalia)属の高木常緑樹。
原産地は西アフリカで、主な生息地域は、ナイジェリア、カビンダ、カメルーン、コンゴのブラザビル、ガボン、赤道ギニアなどです。
西アフリカの先住民バンツー族は、ヨヒンベの様々な薬効を知っており、主には精力剤として利用していましたが、その他にも催淫剤や局所麻酔薬としても利用していました。
■ヨヒンベの薬効
ヨヒンベの樹皮には、“ヨヒンビン(Yohimbine)”というアルカロイドを含んでおり、ヨヒンビンは生殖器への血流や神経伝達を増進します。催淫(さいいん)作用・強壮作用があり、催淫剤、精力剤として使用され、刺激的な媚薬効果をもたらします。ヨヒンビンには、アドレナリンの放出を阻止する作用があることから、正しい用量で性的刺激剤として用いられています。古くからアフリカでは、伝統的な覚醒剤として使用されてきた歴史があり、ヨヒンビンに対する臨床試験は実施されていないものの、歴史的な経験からインポテンスの治療薬と認知されています。
また、ヨヒンベのお茶からは、精神活性の作用が得られます。
欧米では、ヨヒンベの抽出物がサプリメントとして利用されていますが、日本ではヨヒンベ樹皮と、ヨヒンビンが共に医薬品であり、国産のサプリメントでは利用されていません。
さらに、ヨヒンベには覚醒効果があり、睡眠を妨げることもあるため、この強力な作用は、他の医薬品との相互作用においては、厳格に管理される必要があります。アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration, FDA)は、ヨヒンベを安全でないハーブのリストに加えています。
副作用の例としては、頭痛、胃痛、鼻水、顔や体の熱、高血圧、頻脈、不安、めまい、嘔吐、振戦(しんせん:「筋肉の不随意運動、震え」の意)、不眠などがあげられます。
長期間または大量に摂取すると危険です。
特に、腎障害や精神疾患のある人や、また妊娠中・授乳中の女性はヨヒンベを摂取すべきではありません。
■ヨヒンベの近種 もうひとつの“ヨヒンベ”=“Pausinystalia macroceras”
“Pausinystalia yohimbe”と近い種として、アフリカ以外ではあまり知られていませんが、“Pausinystalia macroceras”という種もあり、こちらもアフリカでは“ヨヒンベ”の名で広く知られています。
“P. macroceras”の生息地は、ナイジェリア、カビンダ、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴのブラザビルやキンシャサ、赤道ギニア、アンゴラなどです。
Pausinystalia macrocerasもまた常緑樹で、40m程の背丈まで成長できますが、多くはより低い背丈です。
ヨヒンベ(Pausinystalia johimbe)ほどポピュラーではない種ですが、ヨヒンベ(P. johimbe)に非常に似た外観を持ち、その性質も似ており、同じような用途で利用されます。野生種から薬品も作られており、ヨヒンベ(P. johimbe)の代用品ともされます。
分布している地域はアフリカ西部の熱帯地域で、ナイジェリアの南部、カメルーン、中央アフリカ共和国、赤道ギニア、ガボン、コンゴ、アンゴラの北部などです。これらの地域の、森林地帯に、下層の樹木として生息しています。
ヨヒンベ(P. johimbe)と同様に、樹皮が媚薬・抗催眠薬として非常に広く使用されています。
また、樹皮の抽出液は、皮膚や皮下の寄生虫感染症の治療も、局所的に使われます。アルカロイドのヨヒンビンを含有しており、ヨヒンベ(P. johimbe)とほぼ同じ薬効を持つと考えられています。
このアルカロイドは、低用量で脳覚醒剤作用がありますが、大量に摂取すると非常な毒性があり、危険です。
ヨヒンベのこうした効果から、同時に、心臓に刺激効果をもたらすともいえます。心拍数と血圧を上昇させ、また、コカインと同様の局所麻酔作用も有しており、幻覚性もあります。
性的な利用の他にも、寒気や狭心症の治療に使用たり、運動選手の機能向上のためや、歌い手の声の質を高めるためにも用いられてきました。
■その他の用途
こうしたヨヒンベの薬効だけでなく、ヨヒンベの木は、特に若い木材が伝統的な建築物の材料としても使われています。また木材は、燃料としても使用されます。
向精神作用を持つハーブ
カート
(和名:アラビアチャノキ、英名:Khat、学名:Catha edulis)
カートは、ニシキギ科の常緑樹です。
原産地は東アフリカやアラビア半島で、特にアフリカではエチオピアが原産といわれており、熱帯高地に自生しています。
アフリカでは、エジプトから南アフリカの高地林まで自生しています。
「チャノキ(茶の木)」という名を持つ植物としてツバキ科のカメリアシネンシス(Camellia sinensis)も存在しますが、カートはニシシギ科であり、ツバキ科のチャノキとは異なる種で、近縁でないも樹木です。
アフリカの国々では、各地でそれぞれの呼称を持ち、ガット、チャット、ミラーなどと呼ばれます。
■嗜好品としてのカート
カートは、エチオピア、ジブチ、ソマリア、ケニア、イエメンなどの国で、嗜好品として嗜んで利用されます。
カートの葉に興奮性の物質“カチノン”と“カチン”が含まれているためです。これらの物質は、国際的な向精神薬に関する条約で管理されています。
アラビアチャノキの樹木自体には、国際的な規制はありませんが、ヨーロッパにおいては15か国で規制されているものです。
食用として利用されるハーブ(栄養補給)
トウゴマ
(和名:唐胡麻、英名:castorbean / castor-oil-plant、学名:Ricinus communis)
トウゴマは、トウダイグサ科トウゴマ属の多年草で、別名「ヒマ(蓖麻)」とも呼ばれます。
種子から得られる油が“ひまし油”で、この油の名で知られることも多いでしょう。その種には、毒タンパク質「リシン(ricin)」が含まれています。
トウゴマの原産地は、東アフリカと考えられています。また、地中海沿岸地方の南西部、東アフリカ、インドが原産地という説もあります。
現在では、世界中の熱帯地域に分布し、観賞用植物としては、広くさまざまな地域で栽培されています。
トウゴマの利用は古く、古代から利用されており、例えばその種は、紀元前4000年頃のエジプトの墓からも発見されています。また、古代ギリシャでは、ひまし油を灯りや身体に塗る油として使用していました。
またインドでは、紀元前2000年頃から、便秘薬としてもひまし油を使用しており、これは現代での利用と通じるところです。日本薬局方でも、ひまし油は下剤として記載されています。
古代から有益に利用されてきたトウゴマですが、猛毒のリシンが含まれているため、その利用には注意が必要で、特に種子そのものを摂取することは、さらに危険です。ギネスの世界記録では、トウゴマは世界で最も有毒だという記述もあるほどです。その症状としては、吐き気、下痢、頻脈、低血、発作圧などが確認されており、これらの症状は1週間継続することもあります。
リシンを摂取した後、24~36時間で、こうした症状が現れます。
リシンの毒による症状が起きるのは、その種を噛むなどによって、種の中の毒素が放出されたときです。この毒は、アブラムシなどから植物が身を守るためのヒマシ油を作り出しており、殺虫剤としての使用も開発されていると同時に、天然の殺菌剤でもあります。
ヒマシ油は商業的にも製造されていますが、そうしたヒマシ油は、通常の使用では人体に有害ではありません。
2006年時点で、トウゴマの種子の生産量は年間約200万トンで、主な生産地は、インド(全世界の生産量の4分の3以上)、中国、アフリカではモザンビークやエチオピアなどです。