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スリランカのメディカルハーブ概要
インド亜大陸の中でも、スリランカは、インドと並んでメディカルハーブとその歴史の豊かな国です。インドに比べれば比較にならないほどに小さな面積の島国スリランカですが、この島には固有種をはじめ多種多様な動植物が生息する豊かな自然が残されています。
スリランカの自然遺産であるシンハラ-ジャ森林保護区は、約1万ヘクタールもの広大な熱帯雨林で、貴重な動植物を保護しています。
スリランカ国内で、法律で保護されている地域は、なんと国土の14パーセントにもなり、それ以外にも、国土のあらゆる場所には、自然のままの風景や植物が、豊富に残されています。
こうしたスリランカの環境的な特徴から、現在でも、非常に豊富なハーブに恵まれている国なのです。
また、インドのアーユルヴェーダとは多少異なったスリランカのアーユルヴェーダの歴史を持つことからも、スリランカは、インド亜大陸の中で重要なハーブの国だといえるでしょう。
特に日本でのアーユルヴェーダ普及に関しても、スリランカは深い関わりを持っており、スリランカ政府公認のスリランカ・アーユルヴェーダ医学協会(SLAMA; Sri Lanka Ayurveda Medical Association)の協力により、2004年には日本国内で非営利団体の日本アーユルヴェーダ普及協会(JAPA)が設立され、スリランカのアーユルヴェーダの普及が、現在まで進められています。
こうしたスリランカのメディカルハーブと、その取り組みについて、ご紹介します。
スリランカのアーユルヴェーダの歴史
スリランカのアーユルヴェーダは、約5000年の歴史を持ちます。もともと、インドのアーユルヴェーダと、「デーシャチャキッサ」と呼ばれるスリランカ独自の伝統医療が融合したもので、この融合は、紀元前3世紀にスリランカに仏教が紹介された経緯で、その後に起こりました。

スリランカの伝統的な、薬学、解剖学、医学についての手書き本(写本)(1700年頃)。椰子の葉に書かれているのは、伝統的な衣服を着た医学の専門家の姿。シンハラ医学の医者たちは、この手書き本を、医学研究の指標として敬意をもって扱っていた。魔術と初期医学の間の橋渡しとなる、健康のために書かれた書物とされる。
スリランカのアーユルヴェーダ独自のハーブ
またスリランカのアーユルヴェーダには、インドのアーユルヴェーダにはない処方と生薬が多く含まれていることが特徴です。
小さな島国スリランカには、この島にしか自生しないハーブが多々あることから、それらをスリランカのアーユルヴェーダでは多様します。
さらに、それらのメディカルハーブやアーユルヴェーダの手法が、日常的に人々の生活の中に生かされており、古典のアーユルヴェーダも残されているといわれます。
アーユルヴェーダと行政
行政的にも、この取り組みは進んでおり、1961年には、「アーユルヴェーダ法」が制定され、1980年には保険省(アーユルヴェーダ課)が設立されました。国をあげて、アーユルヴェーダの保存と、人々の生活への浸透が努力されている国なのです。
こうした流れから、2001年には、保険省より独立して、アーユルヴェーダ省(Department of Ayurveda)がひとつの省として独立して、設立されました。アーユルヴェーダ省は、現代に生きる国民のためだけでなく、将来に渡って、スリランカの伝統であり知的財産のアーユルヴェーダを伝えていく、という使命も持ち、その保存と研究に取り組んでいます。
そして、スリランカのメディカルハーブを厳重に保護し、輸出を禁止しているハーブもあります。
このアーユルヴェーダ省の下に、国立アーユルヴェーダ研究所(National Institute of Traditional medicine)、国立アーユルヴェーダ製薬会社(Sri Lanka Ayurvedic Drugs Corporation)、国立アーユルヴェーダ病院などが運営されています。
統合医療としてのアーユルヴェーダ
スリランカのハーブは、身体的な効能のみでなく、精神面へのアプローチも重視されています。例えば、スリランカのアーユルヴェーダには、8つの部門*1)の科がありますが、そのうちのひとつには「精神科」があり、精神面に焦点を当てて癒していくアーユルヴェーダの伝統があります。
*1)スリランカのアーユルヴェーダ8つの部門:
内科、外科、耳鼻科、小児科・産科、毒物科、精神科、強壮科、性医学科の科に分かれている。現代では、スリランカにおいて、アーユルヴェーダの治療を行うためにはアーユルヴェーダ医師としての免許資格が必要だが、免許制になる以前には、家系的にその知識が引き継がれ、8つの科のうち専門とする科を、それぞれのアーユルヴェーダ医師の家系が保ってきていた。
そもそもアーユルヴェーダは、単に身体の健康というだけでなく、心と精神の健康も含め、総合的な健康と治癒を目指すものです。精神的な不調に対しても、ドーシャの乱れがその原因とされます。
そしてその真髄には、身体・心・精神が互いに作用し合っているという認識があり、それは現代の西洋のヒーリング(癒し)のシステム「Body(身体)・Mind(心)・Spirit(精神)」の統合にも通じるものです。
そうした意味では、近代西洋医学以後の統合的な癒しをめざす方向性が、古代の時代から実践されていたシステムのひとつが、アーユルヴェーダだといえるでしょう。現代実践されているアーユルヴェーダも、こうした現代の癒しの傾向を取り入れ、ヨガや瞑想なども含めたトリートメントを行う滞在型リゾートが人気になってきています。
例えば、額にオイルをたらす“シロダーラ”は、「心の治療」とも呼ばれることもある療法です。人間の高次の精神機能の中枢だとされる前頭葉にアプローチし、脳の視床下部を弛緩させ、肉体的な治癒と共に、精神を統合していくテクニックです。
具体的には、「額の中心」に温めたハーブ・オイルを循環させながら垂らしていきますが、この「額の中心」は、ヨガなどでは「第三の目」と呼ばれる第6チャクラの位置に当たります。精神性に関わるチャクラです。
シロダーラには、高い精神性を開花させる目的と同時に、不安などの精神症状や精神的ストレスを癒す効果、感情をコントロールする効果が認められています。シロダーラのこうした効果は、瞑想による効果と同等とされます。
このシロダーラで利用されるオイルは一般的にはセサミ(ゴマ)・オイルですが、オイルには、患者の体調や症状に合わせて、様々な配合のハーブが利用されます。
このように、精神面・心理面へのハーブの作用を体系化してきたことは、世界中のメディカルハーブの歴史と状況の中でも、特に、現代に生きる私たちにとって必要な要素といえるでしょう。
スリランカでポピュラーなハーブ商品
ハーブティー
以下は、アーユルヴェーダ省推奨のハーブ商品メーカーも製造している、スリランカのメディカルハーブティーです。無農薬完全有機栽培で製造される高品質なものから、スーパーマーケットなどでも販売されている安価なものまで、スリランカでは日常的に飲用するポピュラーなハーブティーです。
イラムス茶
(Iramusu、学名:Hemidesmus indicus)
イラムス茶は、イラムスの根から作られます。イラムスは匍匐(ほふく)性で、地を這うように成長し、根には木のような独特の香りがあります。
イラムス茶は、かつて現在の紅茶が栽培される前には“セイロン茶”と呼ばれていた伝統的なハーブティです。甘い香りは、精神的なアロマアテラピー効果もあり、とても飲みやすいハーブティーです。
薬効としては、イラムスは、血行を促進し、細胞を活性する効果があります。またこのため、女性特有の様々な体調不良の改善に、役立つメディカルハーブです。
特に、冷え性、また冷え性や疲労から来る様々な不調には、イラムスは最適です。
例えば、肌のくすみ(血行不良)、目の下のクマ、肩こり、頭痛、下腹部痛、腰痛など、日常的な不調に適応し、疲労回復、体力増強に役立ちます。また、皮膚疾患を和らげます。
イラムスはカフェインを含まないため、神経を興奮させることなく、子供の滋養強壮のためにも摂取でき、また就寝前にも飲むのにも適しています。
さらに、精神的に気持ちを明るく、元気にさせる効果もあります。疲労時の精神的なフォローにもいいでしょう。興奮した精神を落ち着かせる効果もあります。
スリランカのアーユルヴェーダでは、イラムスは「血液浄化・体内浄化」のハーブとして、よく知られています。
体力・活力の増強や、美容のため、その他、毎日気軽の飲める健康茶として、イラムス茶はとても重宝するハーブティーです。
ベリリーフ茶
(Beli Leaf、学名:Aegle Memelos)
ベリリーフは、ベリの木の葉のハーブです。スリランカでは大変ポピュラーな、日常的な健康維持のためにハーブティーとして飲用されます。
ライトグリーンの色味で、癖がなく、子供から大人まで飲みやすい味が特徴です。
薬効としては、解毒・抗菌・抗炎症作用があり、伝染病の予防にも利用されてきました。
また、フラボノイドを含み口腔内の衛生やリフレッシュしたいときにも最適です。さらに、胃腸の働きも助けます。
美容のためにも有効で、リラックス効果もあります。
特に季節の変わり目などの体調管理にも、役立ちます。
ベリマル茶
(Belimal、学名Aegle Memelos)
ベリリーフと同じベリの木の、花を使ったハーブティーは「ベリマル(Belimal)」と呼ばれ、こちらも日常的に飲用するハーブティーとして販売されています。マル(mal)は、“花”という意味です。
ベリは古くから飲用として利用されていますが、主に呼吸器の不調を緩和することで知られています。日本のハトムギ茶や麦茶のような味で、飲みやすいハーブティーですが、スリランカの特に暑い地方では、ジャガリ(=孔雀椰子の固形糖蜜)をかじりながらベリのお茶を飲む習慣があります。
カフェインフリーのため、子供も安心して飲用できます。
また、ベリの花には食欲増進作用や、解熱作用、鎮痛作用、渇き・嘔吐・下痢・消化不良の緩和作用もあります。高糖・高血圧の症状改善にも効果があるとされています。
ポルパラ茶
(学名:Aerva lanata)
ポルパラは、その葉が、お茶として利用されます。葉は、フレッシュ(生)またはドライ(乾燥)の状態で、も、どちらでも効果があるのが、利用しやすい点です。スリランカではどこにでも生えているハーブのため、入手しやすく、薬としてだけでなく、スープやお粥などの料理にして食べることもよくあります。
薬効としては、ポルパラは、デトックス(解毒)のためのハーブティーとしてよく知られています。
またさらに、消炎、解熱、免疫力増加作用なども持っています。風邪のときだけでなく、コレラにかかった時や、ヘビに噛まれた時にも、解毒剤としてポルパラは使われてきました。
さらに最近では、アーユルヴェーダでは、
などを改善する薬として使用されています。
例えば、腎臓結石の場合は、煮出したお茶を一日に2リットル程飲むよう指導されますが、これはポルパラのもつデトックス作用(解毒、体内の毒素・老廃物の排出、血液浄化、利尿効果)により、結石に大変効果があるとされているためです。
ポルポラは、日々の体調管理のみならず、こうした重篤な場合にも重宝されてきたメディカルハーブです。日々飲み続けていると、身体が軽くなったように感じるという感想が、よく聞かれます。
カレーリーフ茶
(英名:Curry Tree、和名:オオバゲッキツ(大葉月橘)、または、ナンヨウザンショウ(南洋山椒)、または、ナンヨウザンショウ、学名:Murraya koenigii syn. Murraya koenigii)
カレーリーフは、ミカン科の常緑の低木または高木です。成長すると背丈高さ4~6m、幹は直径40cmほどになります。メディカルハーブとして利用される葉は、長さ2~4cm、幅1~2cmで、その淵に細かい鋸歯を持っているのが特徴です。
別名“カレーノキ(curry tree)”、またその葉は“カレーリーフ”と呼ばれ、主にカレー料理の香辛料として利用されます。柑橘系の香りも加わったスパイシーな香りです。
原産地はインドですが、スリランカや南インドでは、カレーには必ず入っています。
単なるカレーの味付けのためだけではなく、その薬効もすばらしいものがあります。
カレーリーフの薬効は、抗酸化作用、血液浄化作用がその主なものです。
そして伝統的に、高血圧、心臓病、糖尿病の治療に利用され、また、コレストロールや中性脂肪の低減にも有効とされています。
さらに興味深いことに、最近の研究では、カレーリーフには、虫歯を予防する作用があることが分かりました。
また特に、カレーノキの葉・樹皮・根は強壮作用も持っているため、体調がすぐれないときや、虚弱体質の方にも良いでしょう。
このような薬効を持つカレーリーフが、スリランカでの毎日の食事であるカレーに必ず含まれていることは、まさに“医食同源”の知恵だといえるでしょう。
ラナワラ茶
(Ranawara、学名:Cassia auriculata)
ラナワラ(Ranawara)は、スリランカの言語シンハラ語の名前です。スリランカの自生種で、スリランカでは大変人気があり、貴重なハーブとされています。
成長すると背丈2.5mほどになる常緑の低木で、小葉は長さ1~3cm、下面に細い毛があります。花は鮮やかな黄色、葉は鮮やかな緑色で、鑑賞するにも愛らしい植物です。
歴史的には、3000年前のアーユルヴェーダの文献に、その効果が記載されていました。
古くからスリランカでは「若返りのハーブ」として人気もあり、利用されてきました。特に、女性にとってはメリットの大きなハーブで、「美容のハーブティー」ともいえます。例えば、
などに役立つとされています。
その他にも、女性に限らず、
などがあり、胃腸の症状や疾病、慢性的な結石や糖尿病の治療にも利用されています。
カフェインフリーのため、日常的に摂取しても問題がなく、長期的に飲用することで、ラナワラの効果が期待できます。
アーユルヴェーダ製品
スリランカでは、日常生活の中にアーユルヴェーダが生きているだけに、様々なアーユルヴェーダ製品が製造販売されており、スーパーなどでも気軽に購入できます。そんな中でも、特によく知られたアーユルヴェーダ製品をご紹介します。
プラーナジーワ・オイル(Pranajeewa)
アーユルヴェーダの国スリランカにおいて、数多くのハーブ商品の中でも特にそのパワフルな薬効で親しまれているのが、“奇跡のオイル”とも呼ばれる“プラーナジーワ・オイル”です。アーユルヴェーダ病院 SETHSUWA AYURVEDA HOSPITAL の併設工場で製造されるいくつかの商品の中でも、抗酸化力に非常に優れ、“若返りのハーブ”として最もポピュラーで、その伝説的な薬効でも知られる飲用のメディカルハーブオイルです。化学物質などを一切含まない、天然のこのハーブオイルは、どろっとした粘度があり、独特の匂いがしますが、このオイルのファンにとっては他に変えがたい癖になる香りと味です。
プラーナジーワ・オイルは、スリランカ産のメディカルハーブを主なものとして、200種類以上ものメディカルハーブを長時間煮込むことで作られます。この工場内で医師の管理の下、伝統的な医学製法によって作られます。
アーユルヴェーダの伝統に基づく処方である一方、近代的な疾病への有効性も研究されています。例えば、主にがん治療におけるプラーナジーワ・オイルによる治療の有効性(抗酸化性)が、コロンボ大学のいくつかの科において研究されており、海外の薬用植物に関するメディアでも取り上げられています。
スーパーマーケットでも販売されているプラーナジーワ・オイルですが、気軽に購入できる国民的な滋養強壮剤である一方で、その薬効の多さ・優秀さには目を見張るものがあります。例えば、薬効として、以下のような疾病の改善効果が報告されています。
プラーナジーワ・オイルの逸話としては、かつてスリランカで、世界初の女性首相となったシリマポ・バンダラナイケ首相の実弟が、その心臓病の手術間近という際に、このプラーナジーワ・オイルを1ヶ月間飲用したところ、手術の必要がなくなるほどに改善した、という逸話です。この逸話は、本人のSETHSUWA社への感謝状と共に、新聞記事(デイリーニュース紙:1998年4月付)にもなったほど有名です。
あらゆる疾病や慢性病への効果が報告されているプラーナジーワ・オイルですが、特に虚弱な体質の方々には、その効果が期待できるでしょう。
風邪の症状に:パスパングワなど
上のプラーナジーワ・オイルが、スリランカ現地でも少し値の張る高級オイルだとすると、こちらはどの家庭でも気軽に常備できる日常的なハーブ風邪薬です。
多くのメーカーから、似たような処方のドライハーブミックスが発売されています。その中でも、スーパーマーケットなどでよく見られるのが、このパスパングワ(Paspanguwa)という名の風邪薬です。
風邪薬といっても、風邪とその症状、発熱への対処として有効なハーブが、ドライ粉末でミックスされているだけの商品。このハーブをコップに入れ、熱湯を注いで蓋(ふた)をして10分程待ってから飲む、というのがほとんどの飲用方法です。生姜の利いた辛苦い味は、コップ一杯も飲みほすと、すぐにも体がホカホカとしてくるほど効き目も分かりやすいもの。体温を上げて免疫力を高め、風邪からの回復をサポートします。
また、アルカロイドのベルベリンの抗菌性と、また抗酸化性にも優れており、肌の健康のためにも最適です。
その他にも、多少の成分が異なり、他のメーカーより製造されている風邪薬がいくつもあります。例えば、国立アーユルヴェーダ製薬会社(Sri Lanka Ayurvedic Drugs Corporation)の製品は「Sanstha Peyawa」という名称で販売されています。
パスパングワに含まれる主なハーブは、
- ブラックペッパー、コリアンダーシード、ジンジャーの根、乾燥カトゥウェルバトゥ(ホソバトケトケナスビ)、パスパダガム(タマザキフタバムグラ)、生パワタの葉、タイナス、乾燥ヴェニウェルガタ、ヴィシュヌクランティヤ、ティッピリ
これらの中で、ブラックペッパー、コリアンダーシード、ジンジャー以外は、どれもあまり聞きなれないハーブではないでしょうか?それらのハーブをご紹介します。
● カトゥウェルバトゥ
(ホソバトケトケナスビ)(Katuwelbatu、英名:Yellow fruit nightshade、学名:Solanum xanthocarpum syn. Solanum virginianum)
カトゥウェルバトゥはアーユルヴェーダで利用されるメディカルハーブで、乾燥させた根が、咳、喘息、胸部の痛み、肝臓障害、発熱などに対して利用されます。また、果実と若葉には殺菌効果があり、マラリヤやデング熱にも効果があるとされています。
● パスパダガム
(タマザキフタバムグラ)(Pathpadagam、学名:Hedyotis corymbosa)
パスパダガムは、アカネ科フタバムグラ属の植物で、熱帯~亜熱帯に広く分布しています。これらの地域では伝統的に、民間医療薬として利用されてきました。主には、発熱、消化不良などに適応し、肝臓を保護し、駆虫作用も確認されています。
● パワタ
(Pawatta、英名:Malabar nut、学名:Justicia adhatoda syn. Adhatoda vasica)
パワタは、キツネノマゴ科ジャスティシア属のキツネノマゴ科の常緑小低木です。
原産地は、インド・スリランカで、これらの地域では、古くから風邪と喉の炎症のための民間薬として用いられてきました。その葉が薬用として用いられ、鎮咳作用の他に、鎮痛、殺虫などの効果もあります。
これらの症状に有効な成分として、バシシン(キナゾリンアルカロイド)など、数種類のアルカロイドが含まれています。
● タイナス
(Thai Eggplant、学名:Solanum melongena)
タイナスは、いわゆる日本の食材として知られている「茄子(なす)」も含まれ、東南アジアで食用として利用される数種類のナスの名称です。
スリランカでもこのタイナスが栽培されておおり、スリランカ料理にも欠かせません。
ナスの果実、種、花など植物全体がアーユルヴェーダで利用され、身体の痛み、心臓疾患、喘息、咳、痔、発熱、顔面の麻痺、坐骨神経痛などの症状に対して、使用されます。
● ヴェニヴェルガタ
(veniwelgata、学名:Coscinium fenestratum)
ヴェニヴェルガタは、南アジア、東南アジアに固有の開花植物で、熱帯雨林においてのみ生息していますが、現在これらの地域で、絶滅危惧種となっています。原産地は、スリランカと、インドの西ガーツ地域とされています。
生息地では古くから、伝統的な医療における薬草とされてきて、様々な疾病の薬として利用されてきました。例えば、発熱、糖尿病、セリアック病やヘビに噛まれた際など、多岐にわたる症状への適応がなされてきました。
● ヴィシュヌクランティヤ・プラント
(Vishnukranthiya plant、和名:アサガオカラクサ、学名:Evolvulus alsinoides)
ヴィシュヌクランティヤ・プラントは、和名「アサガオカラクサ」の名を持つヒルガオ科(Convulvulaceae)の開花植物です。
オーストラリア、インドネシア、ポリネシア、サハラ以南のアフリカ、南北アメリカの熱帯・温暖地域に、広く分布しています。さらに、これらの地域の湿原や湿潤林から砂漠まで、幅広い気候の地域に見られます。
東アジアの伝統医療では、向精神薬、向知性薬(脳の認知力を高めるための薬)として利用されてきました。
神経系や脳の機能を高め、ストレスに抵抗する作用がよく知られますが、消化促進や、お腹の張り軽減の作用もあります。
● ティッピリ(ロングペッパー)
(Thippili または Pippali、英名:Indian long pepper、和名:ヒハツ(畢撥)、学名:Piper longum)
ティッピリは、インドの暑い地域や、スリランカ、他の東南アジアなどに生息しており、それぞれの地域で、さまざまな名称を持っています。
通常、薬用としては、根と果実が利用されます。
喘息など呼吸器系の症状に有効なハーブで、その他にも、消化不良、下痢、胃腸の症状に対して、また代謝促進のために利用されます。
また、血管を拡張し、肺への循環を増加させるため、風邪の症状や、肺が粘液性の状態にある場合に、特に有効なハーブです。気管支拡張や去痰の目的で利用されます。
血液の循環を維持し、免疫機能を高め、肺を若返らせ力を与える作用があるため、普段から風邪をひきやすい方には、風邪予防としてもとても良いハーブです。
その他にも適応できる症状は多く、例えば、
などに有効です。
これらの症状を改善しつつ、以下のような有効な作用があります。
などです。
シッダーレパ・バーム
スリランカのアーユルヴェーダ商品の老舗“シッダーレパ(Siddhalepa)”の、万能アーユルヴェーダ・バーム(外用軟膏)です。パスパングワと同様、どこのスーパーマーケットでも、大抵は置いているほどポピュラーな品です。
有効成分として、ユーカリプス、シトロネラ、シナモン、ピネーネのそれぞれのオイルが、カンファー入りの軟膏に含まれ、清涼感ある強い香りが特徴です。
パッケージには「痛みを軽減」がうたわれていますが、これらの精油の効果から、南国スリランカでは必須の蚊避け、蚊に刺された皮膚のかゆみにも大いに利用されているようです。また、軽い皮膚疾患の症状にも対応できる軟膏です。
シッダーレパ社のこのアーユルヴェーダ・バームの内容は上記の通りですが、多少の内容成分の異なる他社のバームも、店舗によっては販売されているのを見かけます。このシッダーレパ社のバームは、日本のアーユルヴェーダ商品を扱うショップなどでも輸入販売されているもので、日本でもファンも多いブランドです。