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アジアの各地域、インドやイスラム圏でも、信仰と生活が結びついて、ハーブが盛んに利用されてきました。
インド~イスラム圏でのハーブの儀式的利用
インドからアフリカ大陸北部の、乾燥して非常に暑い気候の地域で、儀式のための特にポピュラーなハーブが、「ヘナ(ヘンナ)」です。
ヘナは、現代でも、女性の髪を染める染料として、またアジアの国々では、身体に模様を描く染料として有名です。
ヘナ(Henna、学名:Lawsonia inermis)
ヘナはミソハギ科の植物で、インド~中近東~エジプトなどの地域で、乾燥した水はけの良い丘陵に育ちます。高さ3~6メートルに育つ常緑低木です。
ヘナの薬効と、利用方法
多くは染料として利用されますが、薬効から、切り傷・潰瘍・炎症などに対して使用されることもあります。また、皮膚の保護、紫外線予防、便秘の改善、更年期障害やPMSの緩和の効果も報告されています。
ヘナの着色作用は、主な成分のローソンとタンニン酸によるものです。赤色色素が発色の素となり、髪の主成分ケラチンに絡みついて着色します。抗酸化作用もあり、頭皮の毛穴の酸化した皮脂を取り除き清浄に保つ働きもあります。
このように、毛髪や皮膚を直接染めることができ、有益な効果ももたらす天然ハーブとして、ヘナはとても重宝されてきました。
ヘナは、古くはメソポタミア文明の時代からすでに栽培されていたと言われ、また古代エジプトのクレオパトラもお化粧にヘナを使っていたということは有名です。
儀式の中のヘナ
イスラム世界でのヘナ
ヘナは、イスラム教では、幸運をもたらす植物と信じられ、結婚式など人生の大切な儀式で、ヘナで染める儀式が行われてきました。
またイスラム教以前の自然信仰の時代にも、ヘナの神聖な力が信じられていました。モロッコの遊牧民たちは、そうした古い時代から、ヘナの力を信じ、利用していました。
インド・ヒンドゥー教でのヘナ
一方、インドでも同様に、ヘナは幸運の植物とされてきました。
インドの宗教ヒンドゥー教の女神「ラクシュミー」が、ヘナの女神とされます。
ラクシュミーは、「美・富・健康・豊穣」の女神として人々に大変人気の高い女神です。
後に仏教に取り入れられ、日本にも「吉祥天」として伝わった女神です。
インドでもまた、ヘナは同じく結婚式において利用されてきました。
結婚式の数日前に花嫁に施す儀式「メヘンディ」*1)では、ヘナで吉祥模様を手足に施します。この模様が長くもつほど、結婚生活も幸福であると信じられています。
注*1)メヘンディ:ヒンディー語で「ヘナで肌を染める」「ヘナで肌に模様を描く」という意味。
現代のヘナ
また現代では、結婚式など特別な場合以外でも、肌にヘナで模様を描くことが行われています。
宗教的な儀式と結びついて、染料として使用されてきたヘナですが、現代ではまた、アート、また体に施すボディアートとしても、使用されるようになっています。
宗教とは直接関係しないような場面でも、より”個人的な儀式” “アート”として、思い思いのデザインや模様を皮膚に施すシーンが見られます。
植物由来で安全な染料ハーブ=ヘナならではの人気といえるでしょう。