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現代では、ハーブやメディカルハーブは、主に医薬品との関係で、法律で規制がなされています。その事情は各国で異なっていますが、以下から、アメリカ、ヨーロッパ、日本についての状況を、ご紹介します。
各国のハーブとサプリメント:法整備の歴史
ハーブ周辺の法律と事情:アメリカ
概要
アメリカでは、1976年にハーブは医薬品ではなくなり、その後、一部の認定されたハーブのみが効能を表示できるようになりました。さらにサプリメントについての定義がなされ、現代では、食品・医薬品とは別の”ダイエタリー・サプリメント”というカテゴリとして扱われます。
通常は医薬品でないため効能表示はできないのですが、なんらかの証拠があれば効能の表示ができるというルール(DSHEA)があり、そのため効能表示についてはさまざまな記述が混在しています。
アメリカには国民皆保険がないため、予防と健康維持の観点から、多くのアメリカ人がハーブ・サプリメントを利用していると考えられています。
アメリカ:法整備の経緯
- 1976年:食品・医薬品と化粧品条例の改正。サプリメントを医薬品に分類することが禁止されました。
- 1990年:「栄養表示教育法(NLEA:Nutrition Labeling and Education Act)」が策定され、認定されたハーブのみ効能表示ができるようになりました。
これによりサプリメントは、申請を行い、”病気予防に対して科学的根拠がある”と認められた場合、その申請者以外でも効能を表示できるようになりました。 - 1994年:「栄養補助食品健康教育法」(ディーシェイ、DSHEA:Dietary Supplement Health and Education Act、ハック・ホキン法)」が可決され、サプリメントの定義がなされました。
サプリメントは「ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸のいずれかを含み、通常の食事を補うことを目的とするあらゆる製品(タバコを除く)」と定義され、食品と医薬品の中間に位置する「ニュートラシューティカルズ(Nutraceuticals)」*1)と呼ばれるカテゴリーに位置づけされました。そして製品にはわかりやすいラベル表示が義務付けられ、FDAによる監視下にあります。
ここで定義されたサプリメントとは、錠剤、カプセル剤、粉末、液体など、通常の食品の形以外のものとして販売されるものです。注*1)ニュートラシューティカルズ:
1989年にStephen L.DeFelice博士(米)によって提唱された語で、”Nutrition(栄養)”と”Pharmaceuticals(医薬品)”を掛け合わせている。「人々の日々の健康維持に有用である科学的根拠をもつ食品・飲料」を意味し、日本語では「栄養補助食品、機能性食品」と訳される。この頃には、アメリカ人の成人の約半数~7割が、サプリメントを利用していると調査されています。
法整備による恩恵と実情
サプリメントは、医薬品ではないため、薬のような治験による効果を実証されたものではないとされ、「病気を治す」という主張ができません。
ところが一方で、栄養補助食品健康教育法(DSHEA)においては、”科学的根拠がなくても何らかの証拠があれば効能を表示できる”とされているため、薬のような効果を連想させる表現もされているのが実情です。ですが、消費者とメーカーにとってはメリットも大きく、メーカーにとっては「消費者に商品を教育(告知)する機会を与えた」と大絶賛された風潮もありました。
この法律により、サプリメントは、安全なものに関しては、”その販売流通を監視せず、理由もなく規制しない”という方針になったことが、大きなポイントです。
ハーブについての情報提供と安全性に対する取り組み
DSHEAによってサプリメントの扱いが変わった流れの中、その安全性とハーブの情報提供のため、アメリカ国立衛生研究所内に設置されたのが “Office of Dietary Supplements” です。この機関は、サプリメントのデーターベースや有効性に関する研究報告などを公開しています。
これらの流れを受けて現在では、アメリカにおけるハーブの扱いは、安全性が認められたものについてはかなり自由に流通させることができ、効能もある程度は記載できるという特徴があります。またそのためにこそ、安全性のチェックに力を入れているとも言えるでしょう。
ハーブの安全性については、米国ハーブ製品協会(American Herbal Products Association : AHPA)が『メディカルハーブ安全性ハンドブック』(原題:”BOTANICAL SAFETY HANDBOOK”)を刊行し、500種類以上の薬用ハーブの安全性、相互作用クラス、禁忌などの注意事項の情報を提供しています。この安全性についての情報は、世界中で信頼を得ており、日本においても、厚生労働省による食薬区分の見直しの際に、ハーブの安全性基準の参考として採用されています。