ハーブについて

ハーブ周辺の法律

ハーブと法律

ハーブを利用する際、ショップで葉やサプリメントなど商品を購入したり、また種や苗を購入して個人的に育て楽しんだりしますね。
こうした個人的な利用には、特に法規制はないのですが、ハーブを販売したり広告する際に関係する法規制があります。

個人の購入者にはほとんど関係はありませんが、ショップを開いて自作のハーブや既製品の商品を販売したい方、ハーブの知識を生かして講座など開設されたい方は、知っておくと良いでしょう。

ハーブティー

まず、ハーブには特定の薬理効果を持つ成分が含まれ、健康効果が期待されているものも多くありますが、医師以外が扱えるハーブは”食品”に分類されることを覚えておきましょう。

ハーブや、ハーブを利用したチンキ・エッセンシャルオイルなどは、「薬事法」の規制に従って製造・販売されています。
薬事法とは、厚生労働省が管轄する医薬品についての法律です。この中で、医薬品のみに許可されている内容が示されています。
ハーブ商品は、この薬事法に沿って、医薬品にのみ許可された内容を侵さないようにする必要があります。

その中でも特に気をつけるのは、
・原材料が医薬品のみに利用制限されていないもの
・形状が医薬品のみに制限されていないもの
・効能効果がうたわれていないこと
・用法用量が指示されていないこと
です。

ハーブと医薬品

日本国内の法規制によって、ハーブは2種に分類されます。(*「ハーブに関する検討会報告書」より)
(1)「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」
(2)「医薬的効能効果を標榜しない限り食品と認められる成分本質(原材料)リスト」

上記の(1)は、ハーブの成分を利用して医薬品とされるため、いわゆる”薬”の扱いです。
個人的に健康増進のためや料理などに利用する場合は、(2)の食品としての扱いのハーブを利用しています。

例えば、最近ではインドの伝統ハーブ、アシュワガンダがその例です。アシュワガンダは、ストレスに対抗する免疫力をアップし、滋養強壮をもたらす”アダプトゲン”にも指定されているハーブです。このアシュワガンダが2013年1月23日より医薬品成分に指定され、アシュワガンダを含むサプリメントなどは、一般のドラッグストアなどでは購入できず、医薬品として医師の処方が必要になりました。
この法規制により、それまでアシュワガンダを成分に含んでいた国内製造のサプリメントなどは、アシュワガンダを他の成分に代替しているようです。
ただし、アシュワガンダの種や苗は国内でも販売されており入手できますが、医薬品指定のため、口にいれるためではなく観賞用としての利用が前提になります。

アシュワガンダのつぼみ

アシュワガンダのつぼみ

医薬品ということは、その成分が医学的にも有効だという理由なので、ハーブを利用する私たちにとっても期待できることのようにも思えるのですが、実際、医薬品指定によってそのハーブを含むものが手に入りにくくなるという現実もあります。ハーブを利用したい一般の人々にとっては、複雑な状況ですね。

ところで、近代医学のいわゆる”薬”も、元々は自然の植物の成分を抽出して作られました。
もちろん古代には、現在のような化学合成薬はありませんので、植物そのものが薬でした。”薬草”、”薬用植物”と呼ばれるものは、歴史の中でかつては薬として利用されていたのです。歴史に残っている以前から、人間は薬用植物を利用していただろうという説もあります。
こうしたことから、本来、人の健康維持や疾病予防、さらに病気からの回復にハーブや植物が効果があったことが経験的に証明されてきたのでしょう。
こうした経験を生かしつつ、現代、医者の処方でない個人的な利用としては、疾病に直接作用する医薬品とは区別して、利用されています。

ハーブを乾燥させる

家庭でハーブを乾燥させて利用(フランス)

ハーブが医薬品指定される理由の一つには、そのハーブが含む成分に毒性が認められる場合です。アシュワガンダも、この理由が認められます。
ただし、”毒性”はその分量によって有害になるという点もあり、同様にごく微量の毒性成分があるもので医薬品指定されていないものある、という指摘もあるようです。
どちらにしても、まるごとハーブを利用する場合は、安全性には十分気をつけたいですね。

ハーブの製造や利用者を取り巻く法的な状況は、このようなものなのですが、一方で、ハーブを扱っての施術やカウンセリングも存在します。
日本にはハーブについての国家資格はなく、ハーバリスト(ハーブの専門家)として職業的に許可されているものもありません。
そこで実際には、医師の資格を持つ者が、ハーブや漢方を取り入れ、処方に加えるということを行っている病院や、個人クリニックもあるようです。
健康増進のためにハーブを積極的に利用されたい場合、個人で食事に取り入れる一方で、こうした専門施設を利用するのも良いでしょう。

ハーブとスパイスの調合

また、日本では上記のように薬事法の制限がありますが、海外にはハーブの専門家であるハーバリストが、医師と同じように病気の診断や治療、健康アドバイスや薬草の処方を行っている国もあります。
例えば、イギリスでは、メディカルハーバリストという肩書きがあり、国家資格です。
インドやスリランカでは、伝統療法のアーユルヴェーダは伝統ハーブを使い、健康増進はもちろん、病気の治療も行います。
余裕があるならば、こうした国へ旅行した際に、健康増進のために利用してみるのも興味深いですね。