ハーブについて

ハーブの名前

ハーブの名前

一般にハーブの名前は、英語名で呼ばれることが多いでしょう。
中には、古くから日本で知られていたり、日本の土着のハーブなどは、和名が馴染み深いものもあります。
また、それ以外の地域(国)で馴染みがあり、日本へ近年輸入され知られてきたものには、現地の言葉で呼ばれるものもあります。

様々な名前で知られるハーブもありますが、植物学的にハーブを特定するためには、「学名」を確認します。
学名とは、「学術上、動植物につける世界共通の名称」で、ラテン語でつけられます。

下の写真は、ハーブショップで購入したハーブのパッケージ。信頼できる商品は、このように英語名(通称の名前)とともに学名を記載しています。さらに科名も記載されています。

 「有機Meadowsweet メドウスィート バラ科」  - 英語名:Meadowsweet(メドウスィート)
 - 学名:Filipendula ulmaria

ハーブショップで売られているハーブのパッケージ

ハーブショップで売られているハーブのパッケージ

学名について学ぶ前に、まず、動植物を特定する”分類”について、知っておきましょう。

分類は、大きな枠組みから順に、「界(kingdom)」「門(division)」「綱(class)」「目(order)」「科(familia)」「属(genus)」「種(species)」に区分されます。
例えばヒト(人間)は、「動物界 脊索動物門 哺乳綱 霊長目 ヒト科 ヒト属 ヒト」(最後の”ヒト”が「種」を表す)です。
ハーブでは例えば、アーティチョークは「植物界 被子植物門 双子葉植物綱 キク目 キク科 チョウセンアザミ属 チョウセンアザミ」です。
「界・門・綱」などから記述されることは稀ですが、「目・科・属」は、ハーブ・植物の説明の中でよく目にする分類なので、意識して見ておくとハーブの理解も広がりやすいものです。

さて、学名ですが、この分類のうち、最後の「属」と「種」の2つを並べて記し、それぞれを「属名」「種小名」と呼びます。
例えばアーティチョークは、「チョウセンアザミ属(Cynara)」(属)、「チョウセンアザミ(C. scolymus)」(種)ですが、学名は「Cynara scolymus」(キナラ・スコリムスと発音)です。
属名「Cynara(キナラ)」、種小名「scolymus(スコリムス)」です。

学名の表記には規則があり、属名の頭文字を大文字で、他はすべて小文字で、さらにすべての文字をイタリック体(斜字体)で記します。
これを「二命名法」または「二名法」と呼び、18世紀スウェーデンのカール・フォン・リンネ(*)により定義されました。
*カール・フォン・リンネ(1707-1778):スウェーデンの植物学者。「分類学の父」と呼ばれる。ラテン語名は「カロルス・リンナエウス(Carolus Linnaeus)」。

"分類学の父" カール・フォン・リンネの像

“分類学の父” カール・フォン・リンネの像

また学名では、例えばアーティチョークで「Cynara scolymus L.」と記されることもありますが、最後の「L.」は、この2命名法を定義したリンネ(L.)による命名、という意味で添えられています。

ちょっと難しい学術的な知識になりましたが、この学名を知っているととても便利です。
ハーブやスパイスの中には、様々な名で呼ばれていたり、また異国のハーブやスパイスが手に入らない場合、自国内で取れる似た植物を代用として同じ名で呼んだり、調べていく過程で混乱することが出てきます。
そうしたとき、学名を確認すれば、同じものなのかどうかが特定できます。
ハーブショップなどでハーブやその商品を購入する際にも、品質の信頼のためにも、学名が記述されているものを選ぶと良いでしょう。
確実にそのハーブが利用されていることを示す上に、分類をきちんと意識した商品ということが確認できます。

ハーブの学名を見ていくと、その名前がつけられた経緯や、ハーブの特性・歴史なども理解でき、よりハーブの知識が深まります。
学名からハーブを解説した書籍『ハーブ学名語源事典』は、手軽に身近なハーブの学名とその由来を知れる便利な書籍です。

とはいえ、ラテン語の名前は、私たち日本人にはちょっと敷居が高いと感じることも。
そして、日本語の名前(和名)を知ることで、日本の歴史の中でのハーブと人々との関わり、地域性なども伺え、興味深いとも言えます。
最近話題のハーブを英語名で耳にしたところ、実は和名を見てみると、子供の頃から野草として馴染んでいたハーブだということに気づいたり!という新鮮な出会いがあるかもしれませんね。
ぜひ、和名も合わせて調べてみましょう。

また、英語名と和名が、同じくらいの頻度で使用されているものもあるでしょう。
例えば、日本でも野生で良く見られるスギナ(和名)は、ホーステールという英語名でも良く目にします。
これらは同じハーブを指しています。
こうした2つ以上の名でよく知られているものは、書籍などではどちらか一方の名が記載されていることもあれば、並べて併記されているものもあります。
ハーブを調べていく際には、こうした呼び名の違いも合わせて複数の呼称で調べていくと、より多くの情報が得られるでしょう。

スギナ(ホーステール)

(学名)Equisetum arvense (和名)スギナ (英名)Horsetail(ホーステール)

名前とは、馴染みのある地域でそれぞれの呼称で呼ばれるもの。
英語名や和名だけでなく、中国での呼び名や、あるいはエキゾチックな南米や熱帯の植物なら、現地での呼び名もあるでしょう。

名前には必ず由来があるでしょうから、名前を通してハーブの由来にも触れることで、ハーブの実用的な効能や利用法を越えて、その歴史や地理の特色にも触れることのできますね。
奥深いハーブの世界を、ぜひ覗いてみましょう。