北アジアのハーブ

北アジアのハーブ II ~ ロシアのハーブと、その利用

ヤナギラン

ロシアの家庭菜園「ダーチャ」

ロシアでは、ほとんど人が、家庭菜園つきの郊外のセカンドハウス=「ダーチャ」を持っています。週末や、夏休みなどの長い休みになると、このダーチャにやってきて、野菜やハーブを育てたり、菜園で過ごすことを楽しんだりします。菜園では、ロシア料理で欠かせない野菜やハーブを育てており、実用的にも理にかなったシステムです。ロシアの長い冬に備えるために、夏の間に収穫した野菜やベリー類はピクルスやジャムといった保存食にもします。
こうした生活が、彼らの健康な精神と身体を養う癒しの空間と時間になっているともいえるでしょう。

西安国際博覧会でのロシアの庭(2011年6月)

西安国際博覧会でのロシアの庭(2011年6月)

ロシアのハーブとその利用

ロシアに自生するメディカルハーブ

北アジア=ロシアに自生するメディカルハーブ(薬用植物)をご紹介します。

ヤナギラン

(英名:Fireweed、和名:柳蘭、学名:Chamaenerion angustifolium)

ヤナギラン

ヤナギラン

ヤナギランは、アカバナ科ヤナギラン属の多年草です。アカバナ属とされることもあります。
(らん)の花とは別の種ですが、ヤナギラン(柳蘭)という和名は、葉の形が柳に似ていて、その花をランの花に例えたことによります。また英名の「Fireweed」は、北アメリカの針葉樹林帯で山火事が起きた後に、大群生(群生=同種の植物が1か所に群れて生えること)することからつけられた名です。

・ヤナギランの分布

ヤナギランは、ヨーロッパ・アジア・北アメリカなど北半球の温帯・寒帯地域に広く分布しています。

ヤナギラン

ヤナギラン

山火事の後や、森林の伐採後の土地、林道沿いの湿った草地などにも群生して成長します。他の植物が生育し始める前にいち早くヤナギランはその土壌に根を下ろしますが、その後、土壌が安定して他の植物が生育し始めると、ヤナギランの群落(一箇所にまとまって生育している植物の集まり)は途絶えることもあります。

・ヤナギランの利用

アメリカの先住民ネイティブ・アメリカンたちは、ヤナギランの若い葉を春のうちに摘み、他のハーブと混ぜて利用していました。ヤナギランは、より成長すると葉が硬く、苦い味になります。この成長した段階で、皮を剥いた茎が食されることもあります。
栄養的には、生のヤナギランには、ビタミンCとプロビタミンAが豊富に含まれています。

アラスカの先住民たちにとって、ヤナギランは薬草でした。彼らは、生の茎の部分を患部に置くことによって、膿のある皮膚の炎症や、切り傷を治療します。

ロシアでは、ヤナギランの花と葉を発酵させた後、乾燥させてハーブティーにします。このハーブティーは、「イワン・チャイ」というロシア名で有名です。

ヤナギランの花

ヤナギランの花

ヤナギランと、そのハーブティー「イワンチャイ」には、抗酸化作用、免疫力向上、身体の疲労などの癒しの効果、美肌効果があるとされます。
また、カフェインを含まないため、子供にも安全で、就寝前にも睡眠をさえぎることなく飲用できます。

ヤナギランの葉と花を発酵させて作るお茶「イワン・チャイ」

ヤナギランの葉と花を発酵させて作るお茶「イワン・チャイ」

また、ヤナギランは、お茶としての利用以外にも、葉、茎、根を料理にも使うこともあります。

ロシア原産のハーブ

チャービル

(英名:Chervil、和名:茴香芹(ウイキョウゼリ)、学名:Anthriscus cerefolium)

チャービル

チャービル

チャービルは、セリ科シャク属の一年草ハーブです。
原産地は、ロシア南部のコーカサス地方(=北コーカサス)で、現在ではヨーロッパやアメリカ北東部でも自生しています。
ロシアでは、チャービルは「セルフィーユ」という名で呼ばれます。また、和名の「茴香芹(ウイキョウゼリ)」は、チャービルの花が、ハーブのフェンネル(=ウイキョウ:茴香)に似ていることからつけられました。

野生のフェンネルの花

野生のフェンネルの花

・チャービルの生態

チャービルは草丈10~50cmまで生長します。葉は多く、細かい切り込みの入った羽のような形状です。初夏には、白く小さな花を茎の先に咲かせます。

チャービルの花

チャービルの花

・チャービルの利用

チャービルの葉の形状はパセリに似ており「グルメのパセリ」という別名を持ちますが、パセリと同じように、料理の風味付けにも利用されてきました。甘くさわやかな香りが特徴です。
熱を通しすぎると、風味が飛んでしまうため、多くは生で利用されます。また、乾燥させた葉よりも、生のままの方がその香りも強くなります。

チャービルを添えた料理(エビのマヨネーズクリームあえ)

チャービルを添えた料理(エビのマヨネーズクリームあえ)

ハーブとして利用するために、チャービルは栽培もされています。
また、ハーブティーとしても利用されます。

・チャービルの薬効

チャービルには、多くの栄養素が含まれることによるメリットがたくさんあります。カロテン、ビタミンB群、ビタミンC、鉄、マグネシウムなど、身体に不可欠なビタミン・ミネラルを多く含みます。その効果としては、新陳代謝、消化吸収促進、デトックス効果などが挙げられます。
ただし、チャービルは熱を加えると、これらの栄養素とその効果も半減するため、サラダなどの生で食べることが理想的です。

ロシアの絶滅危惧種の植物・ハーブ

広大な敷地を持つロシアでも、世界の他の地域と同様、絶滅危惧種の植物・ハーブが存在します。顕花植物(花をつける植物のこと)では470以上の種が絶滅危惧種とされていますが、そのうちのひとつをご紹介します。
こうした貴重な植物を自然の中に発見した際、気軽に摘んではいけないので、覚えておきましょう。

イワベンケイ

(和名:岩弁慶、学名:Rhodiola rosea L.)

イワベンケイ

イワベンケイ

イワベンケイは、ベンケイソウ科イワベンケイ属の多年生顕花植物です。
別名として、ナガバノイワベンケイ、イワキリンソウ、また英名では、ゴールデンルート(Golden root)、ローズルート(Rose root)、アークティックルート(Arctic root)、アルファンローズ(Orphan rose)と呼ばれることもあり、多くの名称を持っています。

野生のイワベンケイは、ヨーロッパ、アジア、北アメリカの北極海地方で見られます。ロシアでは、アルタイやトゥヴァなどの地域で自生しています。ヨーロッパロシアの北部、ウラル地方、北極海地方、シベリアの山岳地方、極東では、イワベンケイは保護されています。これはイワベンケイが薬草として利用できるために、乱獲が懸念されているからです。

・イワベンケイの生態

イワベンケイは、背丈4~35cmほどで、様々な形の多肉質の葉を持っています。
花期は6~8月で、黄緑色の花をつけます。

イワベンケイの雄花

イワベンケイの雄花

雌雄異株*1)であり、雄株の黄色みが強く、雌株の花弁は小さく子房が目立ちます。

  • 注*1)雌雄異株(しゆういしゅ):
    雌花と雄花とが別の株(個体)に咲く種子植物。
イワベンケイ(雌株)

イワベンケイ(雌株)

また、秋には鮮やかな紅色の果実が実ります。

イワベンケイの赤い果実

イワベンケイの赤い果実

ハーブとして利用されるのは根茎で、太くて長い形状をしています。また、別名で「ローズルート」と呼ばれるように、乾燥させるとバラのような香りがします。

イワベンケイ(根茎がのぞいている)

イワベンケイ(根茎がのぞいている)

・イワベンケイの薬理作用

イワベンケイには、気分の向上、鬱の軽減など精神的な効果があります。
ロシアでの調査では、肉体・精神ともに機能の向上、疲労軽減、高山病の改善などが確認されました。
こうした作用から、イワベンケイは「アダプトゲン」*2)に数えられています。

  • 注*2)アダプトゲン:
    アダプトゲンとは、トラウマ、不安、肉体的疲労などのストレスへの抵抗能力を高める働きのある天然のハーブのこと。

また、学習効果を増大させるともいわれ、この効果のために、「スマートドラッグ」とみなされることもあります。

ロシアでポピュラーなハーブティー

ロシアでは、ハーブティーがよく飲まれます。これは、ハーブティーの持つ身体を温める効果が、寒いロシアで重宝されるからでしょう。
ハーブティーの中でも、ロシアでよく飲まれるポピュラーなハーブには、以下のようなものがあります。どれもロシアで栽培されているハーブです。

  • ヤナギラン、オトギリソウ(=セントジョーンズワート)、シモツケソウ(=メドースィート、セイヨウナツユキソウ)、グーズベリー(=スグリの葉)、コケモモの葉

また以下は、ヨーロッパのハーブとしてよく認識されていますが、ロシアでもハーブティーとしてよく利用されているハーブです。

  • コンフリー、タラゴン、セージ、チャーガ、リンデン、タイム、ネトル

例えば、ネトルはロシアのブレンドティーにもよく入っており、道端に自生しているのをよく目にするほど、ロシアではポピュラーなハーブです。

ネトル

(英名:Stinging nettle / Common nettle、和名:セイヨウネトル、学名:Urtica dioica)

ネトル

ネトル

ネトルは、イラクサ科イラクサ属の多年生開花植物です。
ヨーロッパや、広範囲の温帯アジア地域、西部アフリカ北部などが原産とされますが、現在では世界中でよく見られるハーブです。
古い時代から、伝統医療での薬草として、また、食用やお茶、さらに繊維の原料として利用されてきました。

ネトル

ネトル

ヨーロッパでは、ネトルは料理やハーブティーとして利用される他に、メディカル・ハーブとしてもよく知られ、利用されています。
ロシアでも、ハーブティーの他にも料理にも利用され、スープに入れられることが多いハーブです。

ネトルは、主に「利尿、浄血」などの効果が知られます。その葉や茎には、小さなガラス状のトゲがついているため、皮膚に刺さらないよう、扱いには注意が必要です。

ネトルの茎のトゲ

ネトルの茎のトゲ

ロシアでの紅茶人気

このように、ロシアではハーブやハーブティーはとてもポピュラーですが、それでも飲み物としては、ハーブティーよりも紅茶のほうがポピュラーで、よく飲まれ、好まれているようです。

ロシアの列車内で出される紅茶。「ポッドスタニック(podstakannik)」と呼ばれる、グラスホルダーに入れられている。

ロシアの列車内で出される紅茶。「ポッドスタニック(podstakannik)」と呼ばれる、グラスホルダーに入れられている。

紅茶もまたハーブの一種で、チャノキ(学名:Camellia sinensis)の葉がお茶として利用されるものです。
紅茶の葉には、カフェインやカテキンなどが成分として含まれます。その作用として、 利尿・発汗・老廃物排出作用、血中コレステロールの減少と動脈硬化予防など、健康に有効な作用が認められています。

紅茶工場内の茶葉 / チャクヴィ(Chakva、旧ソ連に含まれていたグルジアの黒海沿岸の集落)

紅茶工場内の茶葉 / チャクヴィ(Chakva、旧ソ連に含まれていたグルジアの黒海沿岸の集落)

紅茶の栽培は、ロシアでも行われており、北コーカサスの地域で、盛んです。ロシアの南部・北コーカサスのクラスノダール地方は、お茶の栽培の北限と言われます。

チャクヴィの茶畑(グルジア / 旧ソ連のコーカサス地方)(1905~1915年頃)

チャクヴィの茶畑(グルジア / 旧ソ連のコーカサス地方)(1905~1915年頃)

紅茶には、こうした薬理作用と健康への有効な効果があるものの、ロシアでは薬草の効果としてはハーブティーのほうがよく知られており、体調不良や特定の疾患に対して、メディカルハーブとしてハーブティーが飲用されることが多いです。

一方で紅茶は、団欒(だんらん)のための日常的な飲み物として認識されており、ロシア特有の紅茶文化も誕生しました。

例えば、「サモワール」と呼ばれる金属製の湯沸かし器は、中に燃料を入れてお湯を沸騰させ、紅茶を抽出する茶器です。寒いロシアで、暖房器具でもあったサモワールを囲い、お茶を飲むことが、団欒(だんらん)になったのです。

ロシアの湯沸し茶器「サモワール」

ロシアの湯沸し茶器「サモワール」

家族の団欒(だんらん)だけでなく、客人をもてなすお茶文化も生まれ、紅茶とともに、パンや焼き菓子、ジャムは果物などが振舞われ、ロシア独特のティータイムが誕生しました。

ロシアのティータイム / 紅茶と、パスティラ(Pastila)と呼ばれる伝統的なフルーツ菓子

ロシアのティータイム / 紅茶と、パスティラ(Pastila)と呼ばれる伝統的なフルーツ菓子

料理の中で使われるハーブ

ロシア料理は、比較的薄い味付けの料理とはいわれますが、それでも、風味付けのために香草が好んで利用されます。料理の仕上げなどに、よく使われます。

ロシア料理でよく利用されるハーブには、以下のようなものがあります。

  • ディル、コリアンダー、イタリアンパセリ、セロリ、チャービル、ねぎ、マヨラナ、エストラゴン、サフラン、エシャロット、タラゴン など

その中でも、「ディル、コリアンダー、イタリアンパセリ」の3つの香草は、ロシア料理で利用される香草の定番です。

ディル

(英名:dill、和名:イノンド、学名:Anethum graveolens)

ディル

ディル

ディルは、地中海沿岸原産のセリ科のハーブです。ロシアではディルは「ウクロープ」と呼ばれます。
ヨーロッパでポピュラーなハーブですが、ロシアでも家庭菜園で育てやすいため、ロシア国内でも広く栽培されています。

葉は細く繊細で、爽やかな香りが特徴です。

ディルの葉

ディルの葉

この葉を生のまま、サラダ、スープ、野菜の塩漬け、肉料理、魚料理などに使います。刻んでドレッシングやマヨネーズにも加えられます。

ディルを添えた、魚料理

ディルを添えた、魚料理

また、ディルの種子にも爽やかな香りと辛み、軽い酸味があるため、ピクルスと一緒に漬けたり、パンやクッキーなどの焼き菓子の生地に混ぜて利用されます。

ディルシード(ディルの種)

ディルシード(ディルの種)

・ディルの薬効

ディルには、消化、鎮静作用があります。ヨーロッパでは、赤ちゃんの夜泣きの際に、ディルの種を煎じて飲ませることもあります。

コリアンダー

(英名:coriander、和名:コエンドロ、学名:Coriandrum sativum)

コリアンダー

コリアンダー

コリアンダーは地中海原産ですが、現代では、中央ロシア、ウクライナ、クリミア、カフカス、中東地域などで栽培されています。

コリアンダーの葉はロシアでは「キンザ」と呼ばれ、スープやサラダ、肉料理に使われます。

コリアンダーの葉

コリアンダーの葉

一方、コリアンダーの種は「コリアンドル」と呼ばれ、ディルと同様にパンや焼き菓子に用いる他、魚のマリネやキャベツの塩漬けにも利用されます。

コリアンダーの種

コリアンダーの種

コリアンダーとトーストしたチョリソ入りカボチャスープ

コリアンダーとトーストしたチョリソ入りカボチャスープ

イタリアンパセリ

(英名:Italian parsley / flat leaf parsley、和名:イタリアンパセリ、学名:Petroselinum neapolitanum)

イタリアンパセリ

イタリアンパセリ

イタリアンパセリはセリ科オランダゼリ属の植物で、パセリの仲間です。プレーンリーブド種とも呼ばれます。
日本で「パセリ」と呼ばれるものは葉が丸まっていますが、これはオランダゼリ(英名:parsley、和名:和蘭芹、学名: Petroselinum crispum)と呼ばれる種で、イタリアンパセリとは別の種になります。

オランダゼリ(パセリ)=日本で見られるパセリ

オランダゼリ(パセリ)=日本で見られるパセリ

イタリアンパセリは、オランダゼリよりも葉が平たく、柔らかい風味と香りが特徴です。見た目は、コリアンダーの葉にとてもよく似ています。

イタリアンパセリの花

イタリアンパセリの花

ロシアでは「ペトゥルーシカ」と呼ばれ、国内の各地で栽培されています。

・イタリアンパセリの料理への利用

イタリアンパセリは、生のままでも乾燥させても、その香りが長持ちすることが重宝されています。他のハーブと同様、スープやサラダ、肉・魚料理など幅広く利用されています。

イタリアンパセリ入りサラダ

イタリアンパセリ入りサラダ

ロシア料理の調味料(味付け)

ロシア料理では、他の地域や国の料理にはない、ロシア料理に特有の調味料はありません。
味付けには、塩・コショウ・酢がベースとされるものの、その中でも特に塩が多様され、好まれるようです。
特別なソースやドレッシングなどが市販されていることは少なく、通常は、家庭で、塩をべースにハーブを混ぜて作られるようです。
それだけ、自然のハーブの持ち味が生かされて、利用されているといえるでしょう。

ボルシチ

ボルシチ

ロシア料理でよく利用されるハーブに、タラゴン、ローレル、パセリ、ディルなどがあります。
家庭菜園で採取した野菜はピクルスにして、タラゴンで味付けをします。ロシア料理のボルシチやビーフストロガノフは、ローレルと一緒に煮込んで調理します。同じくロシア料理のピロシキには、パセリやディルを一緒に混ぜて作ります。

ビーフストロガノフ

ビーフストロガノフ

このように、あらゆるロシアの料理には、さりげなく身近なハーブが利用されています。

また、ロシアで有名なお菓子に、「プリャーニク」と呼ばれる焼き菓子があります。「プリャーニク」という名称は、「スパイスが利いて香ばしい」という意味の言葉「プリャーニィ」がその由来です。ジンジャー、アニス、ナツメグ、クローブ、シナモンなど多くのスパイスを生地に混ぜて作る有名な焼き菓子です。

トゥーラ・プリャーニク(Tula Pryanik)と呼ばれる、ロシアのお菓子(ジンジャーブレッド)

トゥーラ・プリャーニク(Tula Pryanik)と呼ばれる、ロシアのお菓子(ジンジャーブレッド)

シベリアマツと、その効能

シベリアマツ(Pinus sibirica)

シベリアマツ(ルチャノヴォロシア(Luchanovo)村の近く/ロシア)

シベリアマツ(ルチャノヴォロシア(Luchanovo)村の近く/ロシア)

ロシアの広大なシベリア地域のタイガに広がるシベリアマツは、ノンフィクションとされる書籍『アナスタシア』*3)によって、全世界に紹介されました。(シベリア杉、リンギングシダー(杉)として紹介されていますが、杉ではなく「マツ」の仲間で、「シベリアンドワーフパイン」や「ドワーフシベリアパイン」とも呼ばれます。)

ウラジーミル・メグレ著『アナスタシア』日本語訳本の表紙

ウラジーミル・メグレ著『アナスタシア』日本語訳本の表紙

  • 注*3:
    20ヶ国語に翻訳されたウラジーミル・メグレによる書籍のシリーズ(著者によりノンフィクションとされている)。

シベリアのタイガには、樹齢500年のシベリアマツが生い茂っています。そしてこの太古の時代から現代まで、一切、農薬や化学肥料などを与えられず、自然のまま生育してきたという環境が、とても貴重です。

林の中のシベリアマツ(左右端からそれぞれ2本目の2本がシベリアマツ)(ロシア・トムスク地方)

林の中のシベリアマツ(左右端からそれぞれ2本目の2本がシベリアマツ)(ロシア・トムスク地方)

シベリアマツの特別な癒しの力について、この書籍では述べられていますが、実際、シベリアマツには、数々の効能が認められています。

たとえシベリアマツの実から採られるオイル、シベリアマツから抽出されるエッセンシャルオイルや、ハーブティーが、商品化されています。

例えば、シベリアマツの実のオイルは、ナッツの風味も残る甘く香ばしいオイルで、頭の回転が速くなり、身体も若返るという効果が紹介されています。ロシアでは「100の病を癒す万能薬」と呼ばれ、古くから民間薬として使われてきました。このオイルの癒しの力は、何千年にも渡って認められてきたとされています。

シベリアマツの球果(ロシア・バイカル湖近く)

シベリアマツの球果(ロシア・バイカル湖近く)

  • 注*4)球果(きゅうか)(上記写真の説明より):
    木化した鱗片状の葉 (鱗片葉) が球状に集ってできている果実。裸子植物のマツ、スギ、モミ、ヒノキなどの果実がこの例。

特に、オイルは加熱せず、サラダにかけて摂取するとその効果が高くなります。小さじ1杯のオイルを1日に2,3回摂取すると、30日ほどの継続でも、頭の回転の速度や、身体の若返りを実感できるといわれます。90日ほど継続すれば、その効果はより大きく発揮できるとされます。

シベリアマツの実のオイルの効能

シベリアマツの実のオイルには、身体に必要なビタミンA,B,E,D,F、ミネラル、不飽和脂肪酸のオメガ3、14種のアミノ酸、19種類の微量元素、繊維など、豊富な栄養素が含まれています。

シベリアマツの実の中の種(ロシア・バイカル湖近く)

シベリアマツの実の中の種(ロシア・バイカル湖近く)

ロシアでは、免疫力を高めることが知られており、虚弱体質改善や、病後の回復にも利用されてきました。さらに、不飽和脂肪酸が血管や細胞膜に働きかけることで、血管の症状にも対処してきました。

シベリアマツの実のオイルに含まれる不飽和脂肪酸のオメガ3には、以下のような効果が認められており、健康効果が期待でいます。

  • コレステロールを低下させる(悪玉コレステロールの値を下げる)
  • 中性脂肪を減らす
  • 動脈硬化・心筋梗塞・高血圧・脂肪肝など生活習慣病の予防
  • 脳を活性化して、記憶力をアップする
  • アレルギー症状の緩和(花粉症、アトピーなど)
  • 鬱(うつ)、イライラなどの精神症状の緩和

さらに、シベリアマツの樹脂(ヤニエキス)には、細胞膜を浄化して免疫を高める効果も知られています。

シベリアマツのエッセンシャルオイル

シベリアマツのエッセンシャルオイルは、シベリアマツの葉・球果から作られます。

シベリアマツの実(球果) / ワルシャワ・パン植物園(PAN Botanical Garden)

シベリアマツの実(球果) / ワルシャワ・パン植物園(PAN Botanical Garden)

針葉と球果を別に手摘みした後、低温・低圧搾法にて作られた上質なエッセンシャル・オイルには、有効な作用を持っています。
シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを分解する作用も、発見されました。