古代文明の定義
「古代」は「文明の成立から古代文明の崩壊までの時代」を指し、「歴史の始まり」にあたる時代区分です。(*1)
西洋では、古代ギリシア・古代ローマの時代(紀元前753~476年)を指し、西ローマ帝国の崩壊(476年)までとされます。
- 注*1)Wikipediaより
古代中国
中国では古代の伝承に神農(しんのう)と呼ばれる皇帝がおり、多くの植物の薬効や毒性の有無を検証したしたと言われています。
神農医薬と農業を司る神とされており、ぞの名は、後に後漢(25~220年)から三国(220~280年)の頃に成立した世界最古の本草書『神農本草経』(しんのうほんぞうきょう)に記されています。
「歴史の始まり」から考慮するなら、古代メソポタミア文明や古代エジプト文明、さらに南アメリカ大陸の古代アンデス文明も、「古代」の時代に入ります。
古代メソポタミア文明(紀元前4000~400年頃)
古代メソポタミアでは、病人を癒す薬としての植物や鉱物の記録が残っています。
当時は、病気は悪霊の仕業だと捉えられ、その治療は、僧侶である魔術師が薬草などを使った儀式として行っていました。古代では、薬草には呪術的な力があるとされていたようです。
一方、ハーブの料理への利用も、古代メソポタミアにおいて発見されています。
古代メソポタミア文明は楔形文字で有名ですが、近年フランスの歴史家ジャン・ボッテロは、この粘土板に楔形文字で刻まれている料理レシピを解読しました。これが、”人類最古のレシピ”と言われ、邦訳もある書籍として出版されています。
このレシピからうかがえる古代メソポタミアで使用されていたハーブとして、
- ルッコラ、ディル、コリアンダー、クレス、フェンネル、マージョラム、ミント、マスタード、ローズマリー、ルー、サフラン、タイム
が挙げられています。これらは現代でも馴染みのあるハーブですが、一方で、サフルー(sahlu)、ズルム(zurumu)という現代では知られていないハーブも記載されいているようです。
古代メソポタミア文明の食材は、すでに現代の中東の食材とよく似ているようです。
古代エジプト文明(紀元前3000~30年頃)
古代メソポタミア文明と同様、古代エジプトにおいても、病気は悪魔の仕業と考えられ、神官によって治療されるものでした。このように、古代では、医療は宗教ととても密接に結びついているものでした。
古代エジプトでは、病気の症状別に、800種の薬の処方、700種の植物・動物・鉱物の薬が記録されていると言います。(*2)
パピルスに象形文字で記録されている薬の名は100種とも言われ、以下のようなハーブ、植物が挙げられています。
- 「アロエ、アヘン、安息香、オリーブ油、アラビアゴム、ケイヒ、サフラン、ザクロ、乳香など」(*2)
さらに、食材としては
- 「コリアンダー、ディル、マスタード、ヘッジマスタード、チャービル」
などが使用され、それぞれエジプト語の名があり、これらのハーブは埋葬の際に墓にも入れられました。その他にも、
- 「ルッコラ、ショウブ、カモミール、ラヴェンダー、アサ、ルー」
などのハーブも利用されていました。
- 注*2)『ハーブの歴史』ゲイリー・アレン著 より
一方、古代エジプト文明でのハーブの利用は、1世紀のギリシャの医師ディオコリデスが記した書籍『薬物誌』に収められている120種のハーブに、エジプト語名が記載されていることからも推測されます。それらのハーブが古代エジプトで利用されていただろうとされています。
エジプト語名が記されているハーブとして、
- 「セロリ、チコリー、エンダイブ、コリアンダー、クレス、ディル、エレキャンペーン、フェヌグリーク、ヤマホウレンソウ、ニガハッカ、マージョラム、スベリヒユ、セージ、ニガヨモギ、そして3種類のミント(カーリーミント、ウォーターミント、ペパーミント)」
などが挙げられます。
また、後に聖書の中に登場する乳香と没薬も、古代エジプトのミイラ作りで利用されていました。
乳香は、紀元前40世紀、墓に埋められた埋葬品として後に発掘されており、没薬は、ミイラ作りのため遺体の防腐処理として使用されていました。
さらに没薬は、日没の際に焚かれていた香にも使用されていました。
どちらも、古代では大変に尊重されており、神に捧げる神聖な香りとして利用されていたのです。
古代メソポタミア文明と古代エジプト文明は、その時期も重なる部分があり、地域も近く、これら2つの文明が、ギリシャ・ローマを経由して、現在の西洋やアラビア社会へ伝わったとされています。そして、「カモミール、ラベンダー、ゲンチアナ」などのハーブが、西洋やアラビア社会へ伝えられたとされます。
古代アンデス文明(紀元前7500年頃までに成立)
古代文明の多くが大河沿いに発展してきたのに対し、古代アンデス文明(紀元前7500年頃~1532年)では、海岸の河川沿いに加え、山間部や高原地帯で主に文明が発達した点が特徴的です。
これらの土地の特徴や、旧大陸から遠く離れたアメリカ大陸という土地柄、また、古代アンデス文明を担った人々が常食していた作物の傾向などからも、独特のハーブが現代まで伝えられて来ました。
例えば、近年「抗炎症作用」が期待され日本でも知られてきているキャッツクロー([学名]Uncaria tomentosa)は、アマゾン流域の一部だけに自生する植物です。「奇跡のハーブ」と呼ばれ、アンデスに古代から伝わり、2000年以上に渡り利用されてきたこの地域特有のハーブです。