19世紀イギリス・ヴィクトリア朝
19世紀イギリス、ヴィクトリア女王の治世(1837~1901年)では、世界各地から取り寄せられらハーブが国内で取引され、栽培が推奨された時代でした。
ロンドン大博覧会
1851年、ロンドン・ハイドパークでの大博覧会では、「水晶宮」と呼ばれるガラス張りの建物が会場として設けられ、園芸などが紹介・推奨されています。
キュー王立植物園
また、この時代の代表的な植物園として、1759年に宮殿併設の庭園として建設されたキュー王立植物園(キューガーデン, Kew Gardens)が挙げられます。現在でも世界有数の有名なこの植物園は、植物についての膨大な資料を持つ研究機関でもあり、また、種子銀行として「ミレニアム・シード・バンク・プロジェクト」を主導しています。2003年にはユネスコ世界遺産に登録されました。
この時代には、家庭用の温室も開発され、寒さに弱い外来種の植物が育てやすくなったり、また「ヴィクトリア朝の庭園」として親しまれるガーデン・スタイルも出来上がってきました。
ビートン夫人と『家政読本』
当時著されたハーブについての書籍として、ビートン夫人の『家政読本(The Book of Household Management)』が挙げられます。
ビートン夫人は、イギリスの作家で、歴史的に最も有名な料理著作家でした。
『家政読本』は、主としてヴィクトリア朝時代の家庭運営の手引書でしたが、1,112ページにわたる900以上のレシピが着色した図解付きで紹介されており、『ビートン夫人の料理書』の俗名もあるほど、料理についての記述が豊富でした。
もちろん、そのレシピではハーブの利用方法についても豊富に記されており、
- タイム、セージ、ミント、マジョラム、セヴォリー、バジル、パセリ
などの香味ハーブが料理用として挙げられています。また、
- ジンジャー、ターメリック、コリアンダー、フェヌグリーク
などのスパイスも紹介されています。
当時、大気の汚染が進んでいく時代の中で、ビートン夫人は空気のきれいな田舎でのハーブ菜園を勧めていますが、田舎のハーブ菜園のために薦めているハーブは、以下の通りです。
- ローレル、コリアンダー、フェンネル、ガーリック、ジンジャー、ホースラディッシュ、マジョラム、ミント、ナスタティウム、パセリ、パースレーン、セージ、ソレル、フレンチ・タラゴン、レモン・タイム
近代初期~ヴィクトリア朝時代のまとめ
このように、近代の初期の時代では、化学合成薬の誕生やワクチンの開発など、現代医療につながる発明など大きな節目であったと同時に、ハーブの利用法はより精妙な形で健康増進に行かせるよう研究されるなど、伝統的なハーブとの関わりは消滅することなく継続していった時代でした。
続く20世紀のヨーロッパでも同様に、それぞれの方向性がより研究を進められていくことになります。