現代のハーブ

現代のハーブI – 概要:見直されてきたハーブ

現代のハーブI – 概要:見直されてきたハーブ

現代の定義

現代は、近代に続く時代区分で、「現在の政治や思想と同じ仕組みが出来上がってから現在までの時代」と定義されます。

現代アメリカのビル群

通常、ヨーロッパでは東欧革命*1)(1980年代)以降を現代とする見方が増えてきており、また、アジアや日本では第二次大戦以降、と考えられています。
ヨーロッパにとっては2度の世界大戦により、植民地主義が段階的に崩壊したダメージは大きく、その後冷戦時代へ移行しました。
続く東欧革命は、「欧米の第二次世界大戦の最高権力者が作ったシステムの崩壊」(Wikipediaより)となり、この状態が現代のヨーロッパの形態につながるものと見られています。

注*1)東欧革命:「1989年にソビエト連邦の衛星国であった東ヨーロッパ諸国で共産主義国が連続的に倒された革命」で、「1980年代末市民や労働者によって共産主義政権が次々と倒された一連の民主化革命」となった。(Wikipediaより引用)

比較的最近の時代である現代は、今の生活に直結する価値観と生活スタイルに結びつく時代ですが、現代のめまぐるしく変化する社会のスピードと同様に、ハーブや医療の世界にもさまざまな変化と発展がありました。

現代のハーブと医療:概要

現代のハーブを取り巻く事情と傾向をひと言で述べると、

「近代以後の西洋医学が大きな壁にぶつかったことにより、近代以前の自然療法や薬草療法が見直されてきた」

と言えるでしょう。

近代以前の自然療法や薬草療法は、現代では「代替医療」*1)と呼ばれるようになります。さらに続いて、近代西洋医学と代替療法を統合する形で、「統合医療」*2)という概念が生まれました。
こうした医療における変化の中で、ハーブは、代替療法として見直される分野となっています。

*1)代替医療:
「医薬品、手術、放射線の3つを武器にした西洋・近代医学」以外の療法のことを指す。また「相補(そうほ)医療」とも呼ばれる。

*2)統合医療:
近代西洋医学と代替療法や伝統医学等それぞれを視野に入れた、患者中心の医療。”統合”という語には、アプローチの違うものから新しいものを創造する、という意味合いが込められています。

代替療法のハーブや植物

西洋近代医学の壁

化学合成薬によって大きく飛躍したかに見えた近代医学が、その壁にぶつかったのは、1950年代頃からです。ウイルスや菌に打ち勝つ合成薬が普及した一方で、心の病や生活習慣病などの慢性病が急増しました。

さらに1970年頃からは、医薬品の副作用や薬害などが社会問題化してきます。万能だと思われていた近代医学と化学合成薬は、決して万能ではなかったということが明るみに出てきたのです。

薬に埋もれる女性

そこで見直されてきたのが、かつての自然療法や薬草療法です。現代では、これらの伝統ある療法は、最先端の医学ととも活用され、”統合医療”の中にその役割を見出しています。
こうして、近代医学の登場によって一度は医療の表から姿を消しましたハーブの医学的利用が、再び評価されてきました。

そもそも近代医学の医薬品は、その半分~8割程度は、メディカルハーブから成分を抽出して作られたもので、そのルーツはハーブなのです。一部の成分のみ抽出し合成した薬の弊害・副作用が現れてくることで、本来の、ハーブをまるごと摂取することの大切さや意義が、改めて研究されてきています。

近代薬と伝統薬

このように、さまざまな種類の植物を、それぞれ”まるごとひとつの存在”として、人に有益な影響をもたらすものとして観察されてきたことは、人類が、メディカルハーブの意義を新たに発見している過程とも言えるでしょう。

ハーブやメディカルハーブに関する様々なアプローチ・研究・利用法が発展している現代、その経緯や法整備、呼び名や規制についても適切に学ぶ必要があるでしょう。

例えば、現代では、植物を利用した療法を「植物療法」と呼びます。

日本でメディカルハーブの普及に努める民間団体・日本メディカルハーブ協会では、「植物療法」に属するものとして、「メディカルハーブ、アロマセラピー、フラワーレメディー、森林療法、園芸療法」などを挙げています。

園芸療法

これらはどれも、近代の時代に、化学合成薬を主流とする近代医学の発展の傍ら、もうひとつの流れとして着実に発展してきた分野でした。
→ 近代のハーブII ? 18~19世紀ヨーロッパのハーブと医療
→ 近代のハーブIV ? 20世紀ヨーロッパのハーブと医療

そういう意味では、近代によってメディカルハーブの利用が完全に途絶えたわけではなく、メインストリームからは外れつつも、着実な発展が密かに行われてきましいた。その内容が今後の人類の健康への可能性として注目されてきているのが、現代のハーブを取り巻く事情といってもいいでしょう。

以下からは、現代、ハーブが注目されるようになった経緯を、さらに詳しく見ていきます。

> 現代のハーブII – ハーブと”サプリメント”